消防団員、責任感強く=出動準備中、下敷きに―輪島の稲垣さん・能登地震
能登半島地震で亡くなった石川県輪島市の稲垣寿さん(46)は、防災士資格を持つ消防団員で、地域の中心的な存在だった。地震発生後、消防団員としての出動に向け準備中に倒壊家屋の下敷きになった。住民は「ヒサシは責任感が強く、優しい人間だった」と悲しみを新たにしている。
稲垣さんは同市門前町高根尾地区で、祖母、母親と暮らしていた。中橋政久区長(76)によると、同地区では2007年3月の能登半島地震を機に地区独自の防災組織が設立されており、稲垣さんも所属していた。
元日の地震発生時、自宅にいた稲垣さんは祖母と母親を外に避難させた。ただ自身は出動に向けて消防団の制服に着替えるため1階の部屋に戻ったところ、2階が崩落して大きな木材の下敷きになった。余震が続く中、住民らはチェーンソーを使い懸命の救出作業に当たった。中橋さんによると、稲垣さんは倒壊に巻き込まれてから約2時間後に助け出されたが、間もなく息を引き取ったという。
稲垣さんは救出時、上に消防団の制服を着ていた。下も消防団のズボンをはいていたがベルトは通っていなかった。ベルトを通そうとしている中、巻き込まれたとみられる。中橋さんは「消防団員としての責任感が誰よりも強かった。消防団員でなかったら祖母らと一緒に避難し、亡くならずに済んだのでは」と悔しさをにじませる。
「明るくて人懐っこく、周りの人の世話をする人だった」(住民の74歳女性)という稲垣さん。中橋さんは「ヒサシは地域の祭りの中心でもあった。恒例の春祭りは3月14日の予定だったが、地震のため中止した。ただ、彼の遺志を継ぎ、いつか祭りを復活させて地域に元気を取り戻したい」と前を見据えた。
[時事通信社]
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