ほころぶ北朝鮮包囲網=米政権に打撃、カギ握る中国
【ワシントン時事】国連安保理の北朝鮮制裁委員会専門家パネルが活動停止に追い込まれる見通しとなったことは、対北朝鮮の圧力強化に取り組んできたバイデン米政権にとって大きな打撃となりそうだ。日本や韓国などと共に対抗していく構えだが、「北朝鮮包囲網」のほころびを繕う手だては限られている。
「ロシアと北朝鮮の協力拡大の一例だ」。米国務省のミラー報道官は28日の記者会見で、ロシアが専門家パネルの任期延長決議案に拒否権を行使したことを強く非難した。
核実験への対応や、日米韓に中国、ロシアを含めて北朝鮮の非核化を目指した6カ国協議で、国連安保理制裁決議は圧力の役割を果たした。だが、近年は中ロが「後ろ盾」として新たな決議案採択を繰り返し阻止。日米韓が中ロとつながりのある個人や団体への独自制裁を連発するなど、国際社会が結束して北朝鮮に圧力をかける構図は崩壊している。
米国家情報会議(NIC)で北朝鮮担当情報官を務めたシドニー・サイラー氏は「対北朝鮮制裁は弱体化しつつある」と指摘。任期延長決議案の不採択を「各国が北朝鮮との外交関係や貿易の再開に向けた『青信号』と見なす恐れがある」と警戒感を強めている。
ミラー氏は会見で、専門家パネルが活動を停止しても、北朝鮮の制裁逃れに関する情報の公開を続ける考えを強調した。だが、制裁の実効性を担保する妙案があるわけではなく、「あらゆる利用可能な手段を使い、同志国と協力していく」と対抗姿勢を示すのが精いっぱいだ。
サイラー氏は、今回の採決で棄権に回った中国が対北朝鮮制裁で重要な役割を果たしてきたと説明。「北朝鮮の核開発拡大を制御することが中国の利益だと分からせるべきだ」と主張し、中国との協力の必要性を訴えた。
[時事通信社]
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