人件費転嫁がカギ=中小企業への賃上げ波及―24年春闘
2024年春闘の労使交渉が大詰めを迎えた。消費拡大を柱とする経済の好循環の実現には中小企業への賃上げ波及が欠かせず、春闘の焦点の一つだ。台所事情が厳しい中小に賃上げを促すには製品・サービス価格に人件費を転嫁しやすくする環境の整備が求められている。
「今年も給料を上げないといけない」。産業用機器を手掛ける東京都内の経営者は賃上げ継続に踏み切る考えだ。昨年は10%引き上げ、物価高手当も支給。今年も同程度の賃上げを予定する。
人材確保のため従業員の待遇を改善する中小企業が増えている。日本商工会議所が調査したところ、今年春に賃上げを予定する中小企業の6割が人材のつなぎ留めなど「防衛的賃上げ」を迫られている。
こうした背景には、人手不足が原因の倒産が急増していることがある。帝国データバンクによると、23年は前年比約1.9倍の260件と過去最多で、大半は中小企業だ。建設や物流、医療の7割が正社員の人手不足を感じているという。
中小は危機感を強めるものの、「無い袖は振れない」のも事実。金属加工業の経営者は「賃上げは必要だと分かっているが簡単ではない」と苦しい胸の内を明かす。中小企業庁が昨年秋に実施した調査では、価格転嫁率は原材料費が45.4%だったのに対し、人件費は36.7%にとどまった。
中小企業経営者の背中を押すには、取引価格への人件費転嫁が円滑に進むかどうかがカギを握る。政府は指針を定め、発注側に定期的な協議の場を設けることや経営トップの関与を求め、価格転嫁促進を目指す。
中小製造業の労働組合を中心とする「ものづくり産業労働組合JAM」の安河内賢弘会長は1日の記者会見で、「これだけ中小が注目された春闘はない」とし、価格転嫁の進展に期待を示した。連合の芳野友子会長は「働きの価値に見合った適正な価格が大事。労働者であり消費者である私たちが価値を認め合うことが大切だ」と訴えている。
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