大窯崩壊も再建決意=珠洲伝統のしちりん作り―鍵主社長「絶対に復活を」・能登地震
![工場の前に立つ鍵主哲社長=19日、石川県珠洲市の鍵主工業](https://img.sp.m.jiji.com/image/out/20240226at36S_p.jpg?updated=1708892421)
能登半島地震で大窯が崩壊する深手を負っても、再建への意思は揺るがない。石川県珠洲市で珪藻(けいそう)土を使ったしちりんなどを生産する鍵主工業の鍵主哲社長(57)は「能登の伝統を守らないといけない」と、江戸時代初期から続く歴史の重みを説いた。
鍵主社長によると、珪藻土は植物性プランクトンの一種である珪藻の殻の化石からなる堆積岩。珠洲市全域に堆積しており、耐火断熱性に優れ、熱効率や保温性が高いという。1日半かけて焼き上げるしちりんは地元で親しまれ、俳優木村拓哉さん主演のドラマでも使われた。近年、アウトドア需要で海外に販路を拡大し、「業績が伸びてきたところだった」と話す。
それが元日に一変した。事務所で最初の地震に襲われた際、「次が来る」と直感。頑丈な作業机の脇に身を伏せた。途端に震度6強の揺れで天井が崩れ落ちたが、「私のいたところだけ大丈夫だった。本当にその一坪だけ」。わずかに差し込む光を頼りにがれきをよじ登り、屋根の穴から脱出した。
「やっぱり駄目か」。後日、工場を確認すると、半世紀も重用した全長50メートルの大窯が崩壊していた。「もう直せない。新規で同じタイプは難しい」。少し小さめの窯を4基発注する予定だが、5億円ほど必要な上、建物の復旧費用ものし掛かる。
人手不足も悩みの種だ。震災前まで35人いた社員は8人が退職し、12人が遠方へ2次避難した。「地元を離れる人が増えたり、能登に移住する人が減ったりすれば、地域が立ち行かなくなる」と嘆く。
地震では姉の奥亨子さん(60)夫妻を亡くしたが、「今はあまり考えないようにしている」と鍵主社長。無事だった小さな窯で、早期の製造再開を目指す。「絶対に復活できる自信がある」。それが能登の復興にもつながると信じている。
[時事通信社]
![崩れた大窯。能登伝統のしちりんなどを焼いていた=19日、石川県珠洲市の鍵主工業](https://img.sp.m.jiji.com/image/out/20240226at35S_p.jpg?updated=1708892421)
![珪藻(けいそう)土を使った能登伝統のしちりん=19日、石川県珠洲市の鍵主工業](https://img.sp.m.jiji.com/image/out/20240226at34S_p.jpg?updated=1708892421)
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