過去と未来の戦争=停戦は「タブー」―ウクライナ著名作家インタビュー
【キーウ時事】ロシアによる侵攻から間もなく2年。ウクライナ人は現状をどう捉えているのか。日本を含む各国で翻訳された著書「ペンギンの憂鬱(ゆううつ)」などで知られるウクライナの国民的作家アンドレイ・クルコフ氏(62)に聞いた。
―この戦争の本質は。
これは過去と未来の戦争だ。プーチン(ロシア大統領)は過去に目を向け、ロシアを(ソ連の独裁者)スターリンの時代に引き戻そうとしている。ウクライナは未来に進もうとしているが、単独ではロシアと決別できない。欧州連合(EU)や北大西洋条約機構(NATO)加盟という形が必要だ。ウクライナのゼレンスキー大統領がロシア語を話す家系の若いユダヤ人で、プーチンが高齢であることも象徴的だ。
―侵攻2年の節目について。
24日は全面侵攻の2周年ではない。この侵略がウクライナだけの問題でなく、権威主義と民主主義という二つの勢力による戦争の始まりだという事実を世界が理解してから2周年なのだ。
―停戦の可能性は。
ウクライナ人にその質問はタブーだ。ロシアに土地を与えれば「もっとよこせ」と要求してくるのは明白だ。
停戦は、政治的には合理的に聞こえる。西側諸国のナイーブな政治家からは、停戦協議に応じるよう圧力がかかるだろう。だが、この戦争は300年以上続くロシアとウクライナの争いに基づいており、ウクライナ人は諦めたらどうなるかをよく理解している。停戦の用意があるとゼレンスキー氏が発言すれば、最大の裏切り者になる。
―国内の厭戦(えんせん)感情は。
人々は疲れても落ち込んでもいない。ロシア人が自分たちの町や村に進軍してくるのを望んでいない。ソ連時代に戻りたくないのだ。
―各国はこの戦争から何を学ぶべきか。
国際秩序をさらに破壊する戦争が他にも起こり得ると理解すべきだ。欧州諸国は、第2次大戦が欧州最後の戦争だと信じ込んでいた。2014年の(ロシアによるウクライナ南部)クリミア半島「併合」は、単にロシアとウクライナの争いだと考えていた。
だが、力で国境を塗り替える前例ができてしまった。ルールに基づく国際秩序は既に崩壊した。ロシアが欧州全体にとって危険なのは明らかだ。
―ウクライナにとって勝利とは。
全領土を解放し、国際社会の助けを借りて何らかの条約に調印することだ。ロシアが今後、ウクライナを侵略しないと保証することが重要だ。
プーチンが生きている間は実現が難しい。彼がいなくなれば、「(これ以上の犠牲は)もうたくさんだ」と考え、ロシアを崩壊から救おうとする誰かが出てくるかもしれない。
[時事通信社]
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