2024-02-20 16:36国際

NATO、防衛強化急ぐ=トランプ氏リスクも―ウクライナ侵攻2年

 【ブリュッセル時事】ロシアによるウクライナ侵攻が長引く中、ロシアが数年後には北大西洋条約機構(NATO)加盟国を攻撃する可能性に懸念が高まっている。NATOは防衛態勢の強化を急ぐが、トランプ前米大統領の「再登板」が最大のリスクとなって立ちはだかっている。
 「プーチン(ロシア大統領)がいつかNATO加盟国を攻撃するかもしれない」。ドイツのピストリウス国防相は1月の独紙のインタビューでこう話した。差し迫った脅威はないと前置きしつつ、「5~8年後には可能になる」とする専門家の見方を紹介し、警戒感を示した。欧州メディアによれば、デンマークのポールセン国防相も「3~5年以内」の可能性に言及したという。
 NATOは1月下旬、ロシアを念頭に置いた冷戦後最大規模の軍事演習「ステッドファスト・ディフェンダー」を開始した。加盟全31カ国と北欧スウェーデンから約9万人の部隊が参加し、5月末まで行われる。
 侵攻を機に始まったNATOの北方拡大も近く大きな節目を迎える。フィンランド(昨年4月加盟)と同時に加盟申請したスウェーデンに関し、全加盟国の国内手続きが近く終わる見通しだ。
 ウクライナ軍の砲弾枯渇が深刻化する中、NATOは支援のため、武器の調達や増産にも力を入れる。昨年夏以降、地上配備型迎撃ミサイル「パトリオット」を含む契約額は計100億ドル(約1兆5000億円)に上った。
 ドイツでは、防衛大手ラインメタルが今月12日、北部で工場の起工式を行った。2025年以降、年間20万発の155ミリ砲弾の生産を目指す。ただ、同社トップは英BBC放送に「侵略者に備えるには10年は必要だ」と厳しい認識を示した。
 こうした中、トランプ氏が10日、防衛費を十分に支出しないNATO加盟国がロシアに攻撃されても「守らない」と過去に話したことを明らかにした。NATOの中核を成す集団防衛を軽視する発言で、各国から批判が噴出。米国抜きでの安全保障体制構築の必要性も指摘される。
 トランプ氏は現在、11月の米大統領選に向けた共和党候補の指名争いを独走中。大統領在任中には防衛費増額を巡り「NATO離脱」のカードもちらつかせた。同氏の返り咲きが現実のものとなれば、NATOの結束を揺るがす一番の懸念材料になる可能性がある。 
[時事通信社]

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