正恩氏、「韓国は敵」で体制維持=韓流の浸透警戒か
【ソウル時事】北朝鮮の金正恩朝鮮労働党総書記は、韓国を「第一の敵対国」と位置付け、好戦的姿勢を強めている。韓国ドラマに代表される「韓流」が住民に浸透していることが要因の一つとされる。正恩氏は、大衆文化の流入を通じて「韓国への憧れ」が広がることを警戒する一方、敵対感情を高めて体制を維持することを狙っているもようだ。
「もはや同族ではなく、敵対的な国家、交戦国の関係になった」。正恩氏は昨年末の演説で、韓国との関係についてこう強調した。今年1月には「『統一』『和解』『同族』という概念を完全に除去しなければならない」と指示。祖父、故金日成主席以来掲げてきた南北統一の目標を放棄する立場を明確にした。
韓国統一省が5日に開いた講演会で、政府系シンクタンク統一研究院の金千植院長は「北朝鮮が韓国との体制競争に負けたことへの挫折感が背景にある」と述べた。南北の経済格差は広がり、韓国銀行(中央銀行)の推計で韓国の国民総所得(GNI)は北朝鮮の60倍。金院長は、北朝鮮の住民が豊かな韓国に「憧れ」を抱けば、「体制の安全にマイナスになると正恩氏はみている」と分析した。
北朝鮮では2020年に、韓国ドラマなど域外の映像を流布した場合、死刑が適用される法律が定められた。しかし、USBメモリーなどを利用して、韓国ドラマの視聴は広がっている。統一省の調査結果によると、脱北者の8割超が域外の映像を見たことがあると回答した。
金院長は「北朝鮮住民の韓国への憧れは、韓流の拡散として表れている」と強調。「韓流の遮断がうまくいかないため、正恩氏は住民に韓国を破壊すべき対象と考えさせようとしている」と説明した。
韓国の尹錫悦政権は、今年4月の総選挙や11月の米大統領選を前に、北朝鮮が軍事挑発を強めるとみて警戒している。統一省元高官は「日米韓3カ国の連携に北朝鮮が力で対抗しようとしており、一種の力比べになっている」と指摘した。
[時事通信社]
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