トランプ氏発言に懸念高まる=集団防衛、改めて議論も―NATO
【ブリュッセル時事】北大西洋条約機構(NATO)の最大の軍事大国である米国のトランプ前大統領が、ロシアの侵攻を受けた加盟国を「守らない」と発言したことが、波紋を広げている。集団防衛は北大西洋条約に定められたNATOの柱であるだけに、米大統領選の共和党候補の指名争いを独走するトランプ氏が大統領に返り咲いた場合の影響を危惧する声が高まりそうだ。
欧州では15日にNATO国防相会合、16~18日にはミュンヘン安全保障会議が開かれる予定。一連の会議では、開始から2年となるロシアのウクライナ侵攻などに加え、米欧の集団防衛の在り方も改めて議論の対象になる可能性がある。
トランプ氏は10日、米南部サウスカロライナ州での選挙集会で、大統領在任時にNATO加盟国首脳から「軍事費を十分に支出しないままロシアから攻撃を受けたら守ってくれるか」と質問され、「守らない。したいようにするようロシアに勧める」と返答したと暴露。攻撃を促すような発言だとして物議を醸した。
31カ国が加盟するNATOは、各国の国防支出を「少なくとも国内総生産(GDP)比2%」とする目標を掲げている。ただ、昨年の推計では、目標に達したのは米国やポーランドなど11カ国にとどまっており、トランプ氏は暗に各国の努力不足を批判した格好となった。
欧米メディアによると、NATOのストルテンベルグ事務総長は11日の声明で「米国を含む全加盟国の安全保障を損なう」と懸念を示した。ドイツのショルツ首相も12日、集団防衛を軽視しており「無責任で危険だ」と批判。ドイツの国防支出が2%に達するとの見通しも明らかにした。
独ポーランド両国の外相と12日にパリで会談したフランスのセジュルネ外相も「トランプ氏の描くシナリオから受ける衝撃を和らげるため、欧州の人々は準備が必要だ」と述べ、欧州の防衛産業拡充の重要性を指摘した。フランスはこれまでも欧州を優先する「戦略的自律」を提唱しており、トランプ氏再選に備え、「脱米国依存」を意識した安全保障論議も活発化しそうだ。
[時事通信社]
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