2024-01-02 14:26国際

トランプ氏「復活」の足音=返り咲きなら一層の強権化―米大統領選

 【ワシントン時事】米国と世界の行方を左右する米大統領選が、今年11月5日に実施される。民主党は現職のバイデン大統領、共和党は返り咲きを目指すトランプ前大統領の指名獲得が有力視され、2020年と同じ顔触れの対決が現実味を帯びる。「復讐(ふくしゅう)」を掲げるトランプ氏は、一部世論調査でバイデン氏に先行。保護主義や強権化を進める「トランプ劇場第2幕」の可能性も排除できなくなっている。
 ◇9割以上の確率
 「裏切られ、不当に扱われた人々よ。私が敵を討つ」。トランプ氏は23年3月、南部テキサス州で既得権益層と闘う姿勢を強調し、支持者を鼓舞した。
 トランプ氏は20年大統領選の敗北を覆そうとし、21年1月の連邦議会襲撃を招いた事件など、四つの刑事訴訟に直面。23年末には、議会襲撃という「国家への反乱」に関与したとして、コロラド州最高裁やメーン州当局に出馬資格を剥奪された。それでも自身が「バイデン民主党による魔女狩り」の被害者だと訴え、逆風を支持に変えてきた。
 共和党は今月15日の中西部アイオワ州の党員集会を皮切りに、候補者選考に入る。選挙サイト「ファイブサーティーエイト」の調査によると、昨年末のトランプ氏の党内支持率は61.2%で他候補を圧倒。続くデサンティス・フロリダ州知事は11.7%、ヘイリー元国連大使は11.0%にすぎず、「非トランプ勢力」結集の動きもない。同サイトは、不測の事態が起きない限り「9割以上」の確率でトランプ氏が指名を獲得すると予想する。
 ◇未消化の問い
 トランプ氏は「史上最大の移民送還作戦」や「全輸入品に原則10%関税」といった排他的で保護主義的な政策を公約。「移民は米国の血を汚す」「害虫のような極左どもを根絶やしにする」―。演説ではナチス・ドイツのヒトラーを想起させる発言を繰り返す一方、ロシアのプーチン大統領や中国の習近平国家主席を称賛。忠誠を誓わない連邦職員の大量解雇も計画し、専制への憧れを隠さない。
 一方、トランプ氏を「民主主義への脅威」と非難するバイデン氏は、4年前より厳しい戦いを強いられている。皮肉なのは、トランプ政権の再来を恐れ中南米などから移民希望者が殺到し、バイデン氏の重荷となっていることだ。23会計年度に拘束された不法入国者は約320万人と、過去最多を記録。長引くインフレに中・低所得層は不満を募らせ、存在感を増す第三政党の候補もバイデン氏から一定数の票を奪うと指摘されている。
 トランプ氏に関わる重要な司法判断が、大統領選の期間内に示されるかは不透明だ。議会襲撃は憲法が定める国家への反乱か、トランプ氏はそれに関与したのか、大統領選への出馬資格はあるのか―。有権者は未消化の問いを抱えながら、11月に審判を迫られる。 
[時事通信社]

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