2023-12-29 14:25国際

ウクライナ・中東危機で逆風=「変革」の時代、問われる指導力―米

 【ワシントン時事】ロシアのウクライナ侵攻、イスラエルとイスラム組織ハマスの衝突、緊張が続く米中関係―。世界情勢は来年、「今年以上に激動の年となる」(米外交専門家)見通しだ。来月に台湾総統選、11月には米大統領選を控える中、揺らぐ国際秩序を立て直せるか。米国の指導力が強く問われる。
 ◇出口見えない危機
 「米国は世界史上、最も強力な国家だ。ウクライナ侵攻と中東危機に同時に対処しつつ、世界全体の防衛体制を維持できる」。バイデン米大統領は10月、CBSニュースとのインタビューで力を込め、ウクライナやイスラエルを支援しつつ、国際秩序を安定させることに自信を示した。
 だが、強気な姿勢とは裏腹にバイデン政権には逆風が吹き荒れる。
 バイデン氏は10月、対ウクライナ軍事支援を盛り込んだ総額1059億ドル(約15兆円)に上る追加予算を議会に要求。年末までに政府予算が枯渇すると警告し、承認を迫ったが、下院で多数派を握る共和党が反対して審議が難航。承認は年明けへと先送りされた。
 中東ではイスラエルがハマス排除を目指し、パレスチナ自治区ガザでの軍事作戦を継続。ガザでの犠牲者増加に伴い、イスラエルを支援するバイデン政権への風当たりが強まる一方だ。紅海周辺ではイエメンの親イラン武装組織フーシ派が商船を攻撃。米軍は有志連合結成を主導し、船舶護衛に乗り出したが、紛争拡大への懸念は深まる。
 ◇連鎖への不安
 インド太平洋に目を向ければ、南シナ海で島々の領有権を争う中国とフィリピンの衝突が頻発し、緊張が高まっている。バイデン氏は中国の習近平国家主席と11月、米サンフランシスコ近郊で1年ぶりの会談を行い、軍同士の対話再開などで合意。ウクライナと中東の対処を優先するため、中国との一時的な緊張緩和を演出したが、対立の火種はくすぶったままだ。
 米シンクタンク、外交問題評議会のジェームズ・リンゼイ上級副会長は現下の国際情勢を「変革の真っただ中にある」と説明。国際秩序を巡る米中間の主導権争いに代表される「地政学的対立」が繰り広げられ、「連鎖反応」で各地で紛争が勃発する恐れを指摘する。
 リンゼイ氏は米国が中国、ロシアとの「大国間競争」を勝ち抜くためには、多くの友好国との連携が必要だと主張する。バイデン政権は「味方にしたい国々に何を与えるべきか考える必要がある」と述べ、「グローバルサウス」と呼ばれる新興・途上国などへ、戦略的に接近する重要性を強調している。 
[時事通信社]

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