2023-12-22 16:09国際

USスチール買収、米大統領選が影=安保への影響、調査へ

 【ワシントン時事】日本製鉄による米鉄鋼大手USスチールの買収に、来秋の米大統領選が影を落としている。全米鉄鋼労組(USW)が買収に反発すると、労組を支持基盤とする与党民主党の一部議員が「労働者と産業基盤の重要性を十分に認識していない恐れがある」と同調。与野党から安全保障や産業基盤への悪影響を懸念する声も相次いでいる。
 バイデン政権は21日発表した声明で、安全保障の観点から、買収阻止を大統領に勧告できる省庁横断組織、対米外国投資委員会(CFIUS)の調査対象になるとの見通しを示した。
 USスチールが本社と一部工場を置くペンシルベニア州は大統領選の激戦州。労組寄りの姿勢を鮮明にしてきたバイデン大統領は、再選に向けて労働者からの反発は避けたいとの思惑もある。声明では「力強い鉄鋼産業が経済と安保に不可欠だと認識し、鉄鋼労働者が公平な条件で競争できるよう全力を尽くす」と配慮をにじませた。
 USスチールは、粗鋼生産量では米3位にとどまるものの、1901年創業の老舗。「鉄鋼王」と呼ばれたカーネギー氏らが設立に関わった「象徴的企業」であることも、反発の一因になっているもようだ。
 買収実現までには、米当局の認可やUSスチール株主総会での承認などハードルは多い。市場では「労組の力が強く、政治的に頓挫する可能性もある」(日系金融機関)と警戒する声も出ている。 
[時事通信社]

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