外堀埋めたIOC=懸念残す「平和の祭典」―パリ五輪
パリ五輪開幕まで残り7カ月半。IOCはロシアとベラルーシの選手に扉を開いた。3月に両国選手について、「中立」の個人資格での国際大会復帰を国際競技団体(IF)に勧告。五輪参加容認に向けて機が熟すまで状況を注視し、IF、各国オリンピック委員会連合(ANOC)などの外堀を慎重に埋めていった。
IOCが容認の方向へかじを切ったのは1月。国連人権理事会が国籍を理由とする除外に「深刻な懸念」を示したことを受け、方針転換した。「後ろ盾」を得たIOCのバッハ会長は「いかなる選手もパスポートを理由に競技参加が妨げられてはならない」と主張。スポーツと政治を切り離すよう繰り返し訴えた。
当初は大きな批判を浴びたが、両国選手が参加した多くの国際大会が混乱なく開催され、実績として積み上がった。ウクライナはロシア勢などが参加する国際大会に自国選手が出場することを禁じていたが、7月に自国選手の出場を認めると軌道修正。反発への熱は引いていった。
スポーツ界の首脳が集まった5日の五輪サミットで、IFの代表者は両国の参加を認めるようIOCに要請し、ANOCも支持。五輪予選の佳境も迫る中、早期の決断が求められた。IOCが6日に開いた各国・地域の委員やIF会長との非公開の会合でも反対意見は出ず、流れに乗じて決定に踏み切った。
ロシアは中立などの参加条件を受け入れるのか。参加する場合、既に60人以上が出場権を得ているウクライナのボイコットや、本番での対戦拒否の懸念も拭い切れない。五輪が「平和の祭典」となるのか、まだ視界はぼやけている。(ロンドン時事)
[時事通信社]
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