前線近くで練習の日々… パリ五輪目指すAS双子姉妹 ウクライナ
【ハルキウAFP=時事】ウクライナのアーティスティックスイミング選手、ウラディスラワ・アレクシーワとマリナ・アレクシーワの双子姉妹は、空襲警報が鳴る中、東部ハルキウで厳しい練習を積んでいる。≪写真は、アーティスティックスイミングのウラディスラワ・アレクシーワ〈右〉とマリナ・アレクシーワ。ウクライナ東部ハルキウにあるマリナの自宅にて≫
2021年の東京五輪でチームの銅メダルを獲得した二人は、2024年のパリ五輪へ向けた練習のため、現在は故郷の街へ戻ってきている。ハルキウはロシアとの戦闘の前線にも近く、爆撃も定期的に受けている。それでもチームはイタリアや首都キーウを経て、大学や文化で知られるこのウクライナ第2の都市へ帰ってきた。
AFPの取材に対して、ウラディスラワは「空襲警報が鳴っている間は、何が起こっているか少し不安になる」と話し、割合に静かなキーウと比べて「戦争が続いているのを感じる」と語る。
二人の両親や親族、友人も、冬の間に攻撃が激化するのではないかという恐怖の中、街で暮らしている。ウラディスラワは「去年の冬は何度も爆撃を受けた。これからどうなるかは分からない。だけど今のところは、ハルキウにとどまるつもりでいる」と明かした。
珍しく練習が休みのこの日は、夫とマリナとの3人で緑豊かな市内の公園へ出かけ、コーヒーを楽しんだ。マリナのアパートではツナサラダのランチを取り、日本茶もごちそうになった。2月に結婚したウラディスラワ夫妻も、隣の建物に住んでいる。姉妹が家を買ったのは侵攻前だが、入居できたのは最近だ。
マリナの家の2階にはレコードプレーヤーがあり、彼女はそれで祖父が持っていたピンク・フロイドやビートルズのアルバムをかけている。部屋のテーブルには、東京五輪の銅メダルなど、これまでに獲得してきたメダルが無造作に置かれている。
■「一番大事な時期」
一緒にソファであぐらをかき、お互いの言葉を引き継ぎながらしゃべる様子からは、二人の仲の良さがうかがえる。ウラディスラワが「私たちの人生で、今が一番大事な時期」と話すと、「戦争とは関係なくね」とマリナが割って入る。
チームは9か月後に行われるパリ五輪への出場を目指している。選手たちが練習を積んでいるハルキウのプールは、昨年9月にロシアのミサイル攻撃でダメージを受け、吹き飛んだ窓ガラスは今もまだ張り替えられていない。マリナは「ボール紙を張って何とかふさいでいる」と明かす。
非常用の発電機もないが、マリナによればプール自体は無事で「水も温かい」という。ウラディスラワも「好きなだけ練習できる」と話し、マリナが「プールには他に誰もいなくて、コーチはそこがすごく気に入っている」と続ける。
そのとき外で空襲警報が鳴るが、「これが普通。毎日5回か6回くらい。夜にもある」とマリナ。とはいえ練習中に爆発音がすることもあり、そのときは濡れた水着のまま「地下に逃げ込まないといけない」そうだ。
国際オリンピック委員会は、ロシア選手のパリ五輪出場の可否をまだ判断していない。姉妹はロシア勢の出場を望んでいないと主張し、マリナは「ロシア代表とは戦争が始まってから会っていないし、できれば一緒になりたくない」と話す。
一方で、二人は競技の今後について別の不安も抱えている。アーティスティックスイミングでは客観性を高めることを目的とした新しい採点システムが導入され、演技の美しさよりも技術的な出来栄えの方が重視されるようになった。
二人のかつてのコーチは、この採点方法はくじ引きのようなものだと批判している。マリナも「芸術性の薄いぶざまなものに見える」と指摘し、美しさで劣っているチームが勝つようになるのではないかと心配した。
それでもウラディスラワは、「できることも、不可能なこともすべてやらないといけない。そうすれば、ジャッジも私たちがプログラムに組み込んだ要素をすべて評価してくれる。だから、すべてを完璧にしないと」と強調し、「これからも一生懸命、頑張っていく」と続けた。【翻訳編集AFPBBNews】
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