ハマス攻撃は凄惨だがホロコーストではない ヤド・バシェム館長インタビュー
【エルサレムAFP=時事】心に傷を負った多くのイスラエル人は、イスラム組織ハマスによる10月7日の攻撃を、ホロコースト(ユダヤ人大量虐殺)になぞらえている。だが、エルサレムにあるホロコースト記念館「ヤド・バシェム」の館長はこれを否定する。≪写真は、エルサレムにあるホロコースト記念館「ヤド・バシェム」のダニー・ダヤン館長≫
ダニー・ダヤン館長はAFPのインタビューに応じ、先月7日のハマスの攻撃は凄惨(せいさん)なものだが、ナチス・ドイツによる600万人のユダヤ人殺害とは根本的に異なると強調した。
「ハマスの集団殺害の意図、サディズム、蛮行に類似性があるとはいえ、ホロコーストとの短絡的な比較は受け入れられない」「10月7日に行われた犯罪は、ナチスの犯罪と同レベルではあるが、ホロコーストではない」と述べた。
パレスチナ自治区ガザ地区を実効支配するハマスは先月の襲撃で、イスラエル高官によると、少なくとも1200人を殺害した。その大半は民間人だという。また、約240人が人質として拉致された。
ダヤン氏は、ハマスによる襲撃が引き金となった憎悪や負の記憶には理解を示す。ユダヤ人にとって「連想させることは明らか」であり、「誰もがそれについて考えた」と認めた。
だが、第2次世界大戦中の多くのユダヤ人とは異なり、今日のユダヤ人は無防備な犠牲者からは懸け離れており、イスラエルという国家が激しい反撃を行っていると指摘する。
「われわれはホロコーストとハマスの襲撃を比較することはできない。なぜなら、われわれには今、戦うための武器があり、ハマスに代償を払わせているからだ」
イスラエルは報復としてガザ地区への爆撃を続けており、ハマス当局によると、これまでに1万4000人以上が死亡した。その大半が女性と子どもだ。
イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相らは、ハマスの襲撃はユダヤ人にとってホロコースト以来の最悪の攻撃だと繰り返し批判している。
ギラド・エルダン国連大使は先月、国連安全保障理事会での演説で「黄色い星」を着用した。
黄色い星は、ナチス支配下の欧州諸国で起きたユダヤ人迫害の象徴となっている。エルダン氏は、安保理がハマスの「残虐行為」を糾弾するまで外さないと主張した。
これに対しダヤン氏は、黄色い星ではなくイスラエル国旗を身に着けるよう促した。
ダヤン氏は、国連のアントニオ・グテレス事務総長がパレスチナの長年の窮状に触れ、ハマスの攻撃は「何もないところから起きたわけではない」と発言したことの方が不快だったと話す。
「子どもの首をはね、音楽祭で若者をレイプし、撃つことがどのような文脈において説明できるというのだろう」と語った。【翻訳編集AFPBBNews】
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