2023-11-24 18:24World eye

ガザでの衝突が呼び水に 西岸で増える次世代の戦闘員

【ジェニン(パレスチナ自治区)AFP=時事】パレスチナ自治区ヨルダン川西岸ジェニンの難民キャンプにあるランドマークのモスク(イスラム礼拝所)とその周辺では、西岸で急増する暴力行為が頻繁に起きている。≪写真はパレスチナ自治区ヨルダン川西岸ジェニン難民キャンプで、イスラエル軍の攻撃で損壊した建物の壁≫
 イスラエル軍による急襲は増えており、パレスチナ人も抵抗する。過去の殉教者の肖像は新たな殉教者のポスターで次々と覆われる。数十年続く両者の衝突は、ガザ地区でのイスラム組織ハマスとイスラエルの今回の戦争によりさらに激しさを増している。
 「モスクで葬儀があると、一般的には愛や思いやり、平和についての説教が行われる」とモスクの指導者であるイスマイル・ジャラダト師(53)は話す。
 「時には、死とそこから教訓を得ることの大切さについても話す」
 モスクでは取材当日、殺害された武装勢力の戦闘員3人の葬儀が執り行われていた。
 ハマスによる10月7日の奇襲で、イスラエル側では民間人を中心に1200人が死亡。これを受けてイスラエル側も激しい報復攻撃を続けており、西岸への侵入もエスカレートさせている。
 ハマスの保健当局によると、ガザ地区では、これまでに1万3300人以上の死者が出ている。一方、西岸のパレスチナ当局は、犠牲者が150人以上に上っているとしている。西岸は1967年以降、イスラエルに占領されている。
 国連によると、ジェニンの難民キャンプでは約2万3000人が生活している。このキャンプは、長年にわたってイスラエルの占領に対抗するパレスチナ武装勢力の温床だと考えられてきた。
 イスラエルはここを「テロリストの拠点」と呼ぶ。近年では最大規模となる作戦を今年中頃に展開し、パレスチナ武装勢力の戦闘員や子どもら数人を殺害。負傷者も出た。
 作戦中、イスラエル兵1人も命を落としたが、これは自軍による誤射だった。
 ■「きっと私の後を継いでくれるだろう」
 モスク向かいの一角では、真新しいアンモベストを着用した若者がこわばった表情で立っていた。そのすぐ近くで、武装勢力の仲間がイスラエル軍の急襲により殺害されたのだという。
 10月7日の急襲で「われわれの士気は高まった」とその若者は言う。手に持つ銃には死亡した別の戦闘員を弔うペンダントがぶら下がり、彼の指は引き金の近くに置かれていた。
 「西岸での抵抗は加速度的に増加している」
 一方のイスラエル軍は、ジェニンで「武装した襲撃者」との戦闘があったばかりで、「数人」を殺害したと述べた。
 イスラエル軍はさらに、「爆発物を投げてきた武装集団」を空爆した後に銃撃戦となり、道路脇に仕掛けられていた「使える状態」の爆発物を複数見つけたと発表した。
 取材当時、道路上には「ハリネズミ」と呼ばれる対戦車障害物があちこちに置かれていた。ハリネズミは踏みつけられた跡が見られたが、地元住民によると、これはイスラエル軍のブルドーザーによるものだという。
 武装勢力の若い戦闘員は「私はわれわれの大義の正義を信じ、戦う。殺されたら天国に行く運命だ」「将来、もし私に子どもができたなら、きっと私の後を継いでくれるだろう」と述べる。
 ■非情の心
 1948年、イスラエル建国宣言を受けて起きた第1次中東戦争で、国連によると約76万人のパレスチナ人が追放された。この事象はアラビア語で「ナクバ」と呼ばれ「災厄」の意味を持つ。現代の衝突は、このナクバにさかのぼることができる。
 最近、ジェニンの住民イブラヒム・アルダムジさん(43)は、10代の息子を含む子どもたちを連れてキャンプを出た。
 ガザでの衝突開始以降、キャンプでは暴力行為が横行し、武装勢力へと引き込まれやすい環境になっている。
 「何が起きてもおかしくない」「家族が拘束されたり、殺害されたりするのを目の当たりにすれば、それが武装勢力に参加するきっかけとなり得る」
 キャンプの別の住民、モハンマド・オベイドさん(33)は、爆発で飛び散った破片で穴が開き、血で黒ずんだほこりっぽい建物外壁を指し示す。
 「今のキャンプの子どもたちは、ここで目にするものによって、早ければ3、4歳で非情の心を持つようになる」【翻訳編集AFPBBNews】

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