借金依存、遠のく正常化=「緊急性」に疑念―補正予算
政府は10日、総合経済対策の裏付けとなる2023年度補正予算案を閣議決定した。一般会計の総額は13兆1992億円。このうち、7割近い8兆8750億円を新規国債(借金)の追加発行で賄い、23年度末の普通国債発行残高は1075兆7000億円に膨らむ。物価高に苦しむ家計や企業を支援して「デフレ完全脱却」への糸口にする考えだが、緊急性の疑わしい支出も目立つ。コロナ禍で膨らんだ歳出構造の正常化は一段と遠のいている。
財政法は「特に緊要となった経費の支出」について補正予算の編成を認めている。今回の目玉は、低所得世帯に対する7万円給付などの物価高対策だが、巨額の公共事業費や工場・事業所の省エネ支援策のように来年度予算で手当てしても差し支えなさそうな事業が目に付く。
岸田政権は、予算を年度内に使い切る「単年度主義」の弊害を是正する手段として基金を活用する方針を掲げ、今回の補正では新設する4基金を含め、計31基金に約4兆円を投じる。ただ、基金の事業は運営が外部に委託されて国会のチェックが行き届きにくいため、無駄遣いの温床になりかねないとの批判もある。
コロナ禍を脱して経済活動が正常化に向かう中、巨額の補正予算が本当に必要なのか疑問符も付く。今回は、総額70兆円を超えた20年度の規模よりは小さいが、東日本大震災やリーマン・ショック後に匹敵する。
日本経済の潜在的な供給力と実際の需要の差を表す「需給ギャップ」は今年4~6月期にプラスに転じ、景気の足かせとなっていた「需要不足」は解消されつつある。巨額補正に加え、1人当たり4万円の所得・住民税減税などで需要を過度に刺激すれば、物価高を助長するリスクもある。
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