運航会社社長、争う姿勢=原告「生涯かけ反省と償いを」―知床事故賠償訴訟で初弁論・札幌地裁
北海道・知床半島沖で2022年、死者・行方不明者26人を出した観光船「KAZU I(カズワン)」沈没事故で、乗客14人の遺族ら29人がカズワンの運航会社「知床遊覧船」(斜里町)と社長の桂田精一被告(61)=業務上過失致死罪で起訴=に約15億円の損害賠償を求めた訴訟の第1回口頭弁論が13日、札幌地裁(小野瀬昭裁判長)であった。桂田被告も出廷し、請求棄却を求めて争う姿勢を示した。
法廷では、原告11人が意見陳述。34歳の息子を亡くした60代男性は、桂田被告に対し「潔く責任を認め、生涯をかけて反省と償い、供養をしていかなければならないことを肝に銘じてほしい」と批判。7歳だった息子が行方不明になっている男性(52)は「死ぬまでこの喪失感は消えないし、心から笑うこともない」と声を震わせた。
原告側は訴状で、船首付近のハッチのふたが適切に閉鎖できない状態だった上、出航を中止すべき基準を超えた風速や波高の予報が出ていたにもかかわらず、桂田被告と死亡した船長=当時(54)=は出航を決めたなどと主張。
一方、桂田被告側は、事故当日午前の気象条件は基準内で、船長からは天候が悪化したら引き返す「条件付き運航」をする旨報告を受けており、過失はないなどと反論した。
桂田被告は閉廷後、「意見陳述の内容は大変重く受け止めさせていただいた。改めておわび申し上げます。謝罪と償い、犠牲者の方々への慰霊を続けていく」などとするコメントを出した。
事故で亡くなった鈴木智也さん=当時(22)=の父親は記者会見で、桂田被告に対し「いまだに事故のことに真摯(しんし)に向き合っていない。自分の責任をしっかり果たしてほしい」などと述べた。
事故は22年4月23日、知床半島の「カシュニの滝」沖で発生。午前10時ごろ出航し、午後1時20分すぎに沈没した。乗客乗員20人が死亡、6人が行方不明となっている。
[時事通信社]
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