石破首相、核禁会議の参加明言せず=被団協と面会、不満の声も
石破茂首相は8日、ノーベル平和賞を受賞した日本原水爆被害者団体協議会(日本被団協)の田中熙巳代表委員らと就任後初めて首相官邸で面会し、祝意を伝えた。3月に米国で開かれる核兵器禁止条約締約国会議へのオブザーバー参加を求められたが、明確に答えなかった。被団協からは「収穫があったという受け止めではない」と不満の声が上がった。
面会時間は約30分。被団協側は田中氏ら役員8人が出席し、2分ずつ自身の経験や核不使用の重要性、政府への要望を伝えた。首相はオブザーバー参加や原爆被害への国家補償などの要請には直接答えず、核を巡る国際情勢を引き合いに「現状はやむを得ない」と、核抑止の必要性を語ったという。
田中氏はこの後のオンライン記者会見で「首相の見解を一方的に聞かされるという場面になり、残念だった」と述べた。首相に再度の面会を求めたといい、会議参加などを改めて要請する意向を示した。
核兵器の開発、保有、使用などを禁じる核禁条約は2021年1月に発効。これまでに94カ国・地域が署名し、このうち73カ国・地域が批准している。米国、ロシア、中国などの核保有国や、米国の「核の傘」で守られる日本は参加していない。
会議を巡り首相はこれまで、ドイツなど他のオブザーバー参加の実例を「研究」した上で「どのような役割を果たせるか検討する」などと述べてきた。一方で核を巡る国際情勢の緊迫化を踏まえ、政府は昨年末、米国と「核の傘」を含む拡大抑止に関する指針を策定。会議参加についても慎重姿勢を変えていない。
田中氏は、平和賞受賞で首相側に前向きな変化が見られたかを会見で問われ、「特には感じられなかった」と一蹴した。首相は面会で「将来の『核なき世界』を目指すという思いは一緒だ」と語ったが、田中氏は「政府と私たち(の考え)はかなり違う。政府方針を変えてほしい」と述べ、働き掛けを続ける考えを強調した。
[時事通信社]
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