一石を投じた渡辺氏の言葉=新たな潮流、生まれるか―IOC
「バッハ続投」に反対を表明した唯一の国際オリンピック委員会(IOC)委員―。それが昨年10月、インドのムンバイで行われたIOC総会での渡辺守成氏だった。五輪憲章を改訂し、バッハ会長の任期延長を可能にするよう求める声がアフリカや中南米の委員から次々と上がる中、毅然(きぜん)と述べた。「スポーツ組織は規則に従う必要がある」。総会の空気は変わり、続投を願う声はやんだ。
渡辺氏の言葉がどれだけ会長の決断に影響したかは分からない。それでもバッハ氏は今年8月、任期満了を迎える来年6月で退任する意向を示した。「家族とも話し合った」という言葉は、続投の可能性も検討していたことをうかがわせた。その後、渡辺氏を含む7人が後任に名乗りを上げた。
渡辺氏は東海大を卒業後、流通大手のジャスコ(現イオン)で新体操の普及に努め、日本体操協会幹部として協会の改革を支えた。2017年に国際体操連盟会長に就任。人工知能(AI)を使った採点補助システムを導入するなど、変化をいとわない手腕には定評がある。
IOC会長選には、世界陸連のコー会長(英国)やサマランチ・ジュニア氏(スペイン)ら有力候補が名を連ねる。歴代会長は欧米出身者が占めている。初の日本人候補として挑む渡辺氏は、そんな慣習を打破する役割も担っている。
「求めるのは多様性か、保守的なものか。それでIOCの価値が決まるんじゃないか」。来年3月にギリシャで行われる会長選の結果次第で、「五輪の総本山」から新たな潮流が生まれるかもしれない。
[時事通信社]
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