日銀ETF処分、長期戦必至=野党「埋蔵金」活用論も
日銀は、金融緩和の一環として大量に買い入れた上場投資信託(ETF)の処分方法を検討している。70.3兆円(時価ベース)にも膨らんだETFを一気に売却すれば、株価下落を招きかねないので、長期間にわたって少しずつ処分する長期戦を余儀なくされるとの見方が強い。
また株式市場の好況を背景に、日銀の保有するETFが生み出す巨額の分配金や含み益は「埋蔵金」扱いされており、野党から少子化対策などの財源に活用する案も出ている。
日銀は2010年にETF購入を開始し、13年に導入した異次元緩和以降、買い入れ額を急拡大。24年3月にマイナス金利政策の解除と合わせ、ETFの新規買い入れを終了したが、9月末の保有額は簿価で37.2兆円、時価で70.3兆円に上っている。
ETF処分について、植田和男総裁は10月31日の記者会見で「現状まだ検討中であり、もう少し時間をいただきたい」と説明。日銀が定めた基本要領では、その処分に当たり、(1)適正な対価(2)日銀の損失発生を極力回避(3)市場にかく乱的な影響を与えることを極力回避―を求めている。
日銀は金融システム安定のため、02~04年と09~10年に、金融機関から保有する株式を買い取ったことがある。買い取った株式は16年4月から毎年0.3兆円程度のペースで売却しており、26年3月までに終了する予定。同じペースでETFを売却すれば、株式市場への影響は小さい。しかし、時価70.3兆円のETFを処分するには、単純計算すると200年超の期間が必要だ。
立憲民主党は、1兆円規模の分配金を生み、含み益は33.1兆円に上る日銀の保有ETFを政策の財源にすることを狙う。衆院選の公約には「簿価で政府に移管した上で、その分配金収入と売却益を、少子化対策などの財源に充当する」と掲げた。一方、日銀は財務の健全性を維持するためETF処分は「時価をベースにする」(植田氏)との方針を示している。
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