自分らしく、祖父に吉報=琴桜、悔し涙も糧に―大相撲九州場所
控えの土俵下で、琴桜は気持ちの高ぶりを抑えていた。「自分らしくいこう」。突きをあてがい、豊昇龍の右からの上手投げに揺さぶられながらも耐える。右からいなすと、相手が土俵に落ちた。
今場所はうまさより強さが目立った。「良くない内容もあったが、白星につなげて、どんどんいい相撲に変わっていった」。この日の一番も、立ち合いから圧力をかける取り口を貫いたからこそだろう。「集中して臨めた」と胸を張った。
1月の初場所は優勝決定戦で照ノ富士に屈した。悔し涙を流し、「苦しい思いもあった。でも、そこじゃない」。目指すのはあくまでも番付の頂点だと自らを納得させた。雌伏の時を過ごし、「辛抱してやれば、賜杯は抱けると実感できた」。
しこ名の継承を生前に認めてくれた元横綱の祖父。幼稚園の頃に初めて出場した相撲大会で銀メダルをもらい、「1位じゃなきゃ意味がない」と言われたことを今でも覚えている。祖父も27歳だった大関5場所目で初優勝を遂げた。歩みを重ね、「間に合ってよかった」と柔和な笑顔を見せた。
入門から9年。初土俵を踏んだ九州で「一つ目標を達成できた」としみじみ言った。最高位に挑む来場所に向け、「しっかりと準備していく」と表情を引き締める。「猛牛」と呼ばれた祖父に導かれるように令和の「琴桜」として賜杯に名を刻んだ。さらなる吉報を天に届けるつもりだ。
[時事通信社]
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