自衛隊機差し止め認めず=過去被害に59億円賠償命令―第5次厚木基地騒音訴訟・横浜地裁
米軍と海上自衛隊が共同使用する厚木基地(神奈川県大和、綾瀬両市)の騒音被害を巡り、周辺8市の住民約8700人が、航空機の夜間・早朝飛行の差し止めと、損害賠償の支払いなどを国に求めた第5次騒音訴訟の判決が20日、横浜地裁であった。
岡田伸太裁判長は自衛隊機、米軍機ともに差し止め請求を退ける一方、過去の騒音被害に対する賠償として総額約59億円の支払いを命じた。将来分の被害への賠償請求は退けた。原告側は控訴する意向を示した。
訴訟では、米軍の空母艦載機が岩国基地(山口県)へ移転した後の騒音状況をどう評価するかが最大の争点だった。
岡田裁判長は、移転完了後の2020年度に国が作成した騒音分布図を基に、航空機騒音の基準「うるささ指数」(W値)75以上の区域は「相当狭まった」と指摘。W値に応じ原告1人月額5000~2万5000円の賠償を認めた。
自衛隊機の運航については「高度の公共性がある」とした4次訴訟の最高裁判決を踏襲。騒音被害を踏まえても「著しく妥当性を欠くものとは言えない」と結論付けた。
原告側は、国内で13年から採用されている各種騒音の共通指標「Lden」などを用いると、軍用機の騒音は民間機などによる騒音と比べて過小評価されており、移転後も被害は継続していると主張。1人月4万6000円の賠償支払いを求めていた。
4次訴訟では一、二審が自衛隊機の夜間・早朝飛行差し止めを認めたが、最高裁は16年、一転して請求を退けた。二審が命じた将来分の被害に対する賠償支払いも棄却した。
防衛省南関東防衛局の話 判決内容を慎重に検討し、関係機関と十分検討の上、適切に対応する。
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