完敗の民主、放心=都市型偏重、労働者に背―「青い壁」総崩れ・米大統領選
【ワシントン時事】5日投開票の米大統領選で民主党のハリス副大統領(60)は「ブルーウォール(青い壁)」と呼ばれる地盤の東・中西部3州を含め、激戦7州を全て失う完敗を喫する見通しとなった。都市型化を進めた同党が「労働者階級の人々を見捨てた」(民主系無所属のサンダース上院議員)ツケは大きく、解党的出直しは必至だ。
「望んだ結果ではなかった」。ハリス氏は選挙から一夜明けた6日、母校ハワード大の演説で率直に認めた。支持者たちは涙を流し、会場には重い空気が漂った。副大統領候補のウォルズ・ミネソタ州知事は記者団に今後の予定を問われ、「ミネソタに帰る」と短く答えた。
かつての製造業の中心地で衰退が目立つ「ラストベルト(さび付いた工業地帯)」に位置し、死守しなければならなかったミシガン、ウィスコンシン、ペンシルベニア3州の「壁」は、軒並み崩壊。黒人やヒスパニック系を含め、幅広い有権者層で2020年の前回選挙から票を減らした。
ウィスコンシン州リポン大のヘンリク・シャツィンガー教授(政治学)は、「労働者階級の関心が分からなかったこと」が最大の敗因だと分析する。多くの国民がインフレに悩まされる中、民主党は出生時の性別と性自認が異なるトランスジェンダーの権利など文化的政策に比重を置き、「常識を欠いた」と指摘。結果的に、農村部や非大卒の有権者らに背を向けられたと解説した。
民主党がハリス氏を担ぐまでの拙速で不透明な手続きも、陣営の足を引っ張った。就任前、再選を目指さないと表明していたバイデン大統領(81)は、前言を翻し2期目を目指し立候補。高齢不安の果てに撤退に追い込まれた。
慌ただしく後を継いだハリス氏は、通常の手順を飛ばして候補に指名された。党内の対立候補との討論会やメディアの厳しいインタビュー、予備選で一般党員の審判を仰ぐといった試練を経ないまま、3回目の選挙に臨むトランプ前大統領(78)と相まみえることになった。
ビヨンセさんらセレブを大量動員した「バイブス(雰囲気)」頼みの選挙は、日々の生活に苦しむ中間層の心に響かなかった。シャツィンガー氏は民主党の今後について「トランプ氏を非難するだけでなく、内省し、どの有権者の支持をまとめたいのか考え直す必要がある」と語った。
[時事通信社]
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