愚直に出続け雪辱=堤、宿敵倒し戴冠―ボクシング世界戦
新王者として自分の名前が呼ばれる場面を、何日も前から想像していた。夢が現実となったリング上で、堤はベルトを高々と掲げた。万感の表情で「この瞬間のために生きてきた」。
1回から一貫してパンチを出し続けた。巧みにかわされ、ガードされ、カウンターを浴びてもへこたれない。10回にダウンを奪って勢いづき、最後まで足を止めなかった。「1ラウンド1ラウンドを全力で戦った。出し切って倒されたらしょうがない」。技術にたけた王者を、愚直なまでの攻めで上回った。
井上拓は同じ1995年生まれで、誕生日が2日違い。12年前の高校総体で敗れた相手に対し、「いつかリベンジを」という思いを持ち続けていた。宿敵の背中を追うように、プロ入りの道を選んだ。
「彼がいたから強くなれた。人生の恩人」。日本王者になるなど実績を積み重ね、たどり着いた初の世界戦の舞台だった。「12年間ずっと片思いしていた相手を超えることができた。拓真に勝てたというのが本当にうれしい」。ベルト奪取と、井上拓への雪辱。二つの夢をかなえ、充実感に満たされたような笑顔を浮かべた。
[時事通信社]
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