米ジョージア州、開票の手作業確認を義務化=「透明性」訴えるトランプ氏―接戦時の混乱狙いか・大統領選
11月の米大統領選が迫る中、南部ジョージア州の選挙管理委員会は開票時に投票用紙の手作業集計を義務付ける新規則を導入した。反対派は、集計ミスの恐れや結果判明までに時間を要することを懸念。共和党候補のトランプ前大統領に近いとされる選管委員が主導した経緯から、接戦となった場合に開票作業での混乱を狙っているとも指摘されている。
◇共和系が主導
激戦州の一つジョージア州の選管は9月20日、大統領選の投票終了後に3人の係員が投票用紙の枚数を全て手作業で確認することを郡に義務付けると発表した。枚数が投票機で自動集計された数と合わなかった場合、責任者が「速やかに原因を特定し、違いを修正しなければならない」と定めている。
選管委員5人のうち、3人が新規則に賛成した。いずれも共和党が多数派を占める州議会上下両院と同党が指名した人物。トランプ氏は8月、州都アトランタで開いた集会で「誠実さ、透明性、勝利のために戦う闘犬だ」と3人を名指しで称賛した。このうち1人が集会に参加しており、公平性に欠けるとして批判の声が上がった。
◇「信頼失う」危機感
確認作業はどう行われるのか。ジョージア州で2番目に人口が多いグイネット郡(約100万人)で選挙実務を取り仕切るザック・マニフォルド氏に話を聞いた。同氏は約2000人に上る係員を抱え、154カ所の投票所を管轄する。
同郡では、有権者が用意された投票機のモニター画面で投票を行う。投票する候補者をタッチパネルで選んで入力し、選び終えた後に有権者の選択が反映された投票用紙が印刷される。有権者が印刷された紙をスキャナーに入れて、投票が完了。投票数は機械が自動集計する仕組みだ。
手作業で確認するのはスキャナーから回収する投票用紙だ。枚数を数え、自動集計された数字と照合する。マニフォルド氏は作業時間が長くなると指摘し、「機械が集計を間違えるのは見たことはないが、人が間違えるのは見たことがある」と人的作業に伴うミスを懸念。投開票日直前での規則変更も混乱を招きかねず、「有権者の信頼を失い始めている」と批判した。
◇選挙結果左右も
トランプ氏は2020年の大統領選で、民主党候補だったバイデン大統領にジョージア州で1万1779票の僅差で敗北。その後、結果を覆そうとしたとして23年8月に起訴された。開票の透明性向上を繰り返し訴えるトランプ氏だが、票数が民主党候補のハリス副大統領を下回った場合に結果を疑問視し、自身の「勝利」につなげる狙いがあるとの見方は根強い。
ただ、新規則については、カー州司法長官(共和党)が選管委の権限を越える恐れがあると警告。公民権運動団体「全米黒人地位向上協会(NAACP)」のジョージア州支部は10月に入り、フルトン郡上級裁判所(地裁)に対し、新規則を停止するよう求める訴訟を提起した。
NAACPの訴訟部門トップで投票権抑圧に対処するジャナイ・ネルソン氏は選管委がこれまでにも「政治的な動機に基づく判断を行ってきた」と批判する。訴訟は民主党のほか、共和党の一部からも提起されており、裁判所の判断が大統領選の行方を左右する可能性がある。
[時事通信社]
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