新たな「旅」需要開拓=東海道新幹線、開業60周年
1964年に日本初の新幹線として開業した東海道新幹線は、10月1日に60周年を迎える。交通の大動脈として、輸送力を拡大させてきたこともあり、累計の乗客数は約70億人に上った。移動需要が大きく落ち込んだ新型コロナウイルス禍を経て、JR東海は東海道新幹線による新たな「旅」需要の開拓に乗り出している。
開業後は高速化が進み、東京―新大阪間の現在の所要時間は「のぞみ」で2時間21分まで短縮、運行本数は1時間あたり片道最大12本に増加した。しかし、新型コロナの感染拡大は経営への打撃となった。同社の2021年3月期の運輸収入は前年度の約3分の1に落ち込み、連結純損益2015億円の赤字に転落した。
コロナ収束に伴い、同社は移動需要の回復に取り組んだ。その一つが、アニメやゲームのキャラクターやアーティストなどを応援する「推し活」を組み合わせた「推し旅」の提案だ。21年秋から展開し、今年度は約100件の企画を手掛ける事業に成長。8月末に始まったゲームシリーズ「アイドルマスター」と新幹線乗車を組み合わせた企画では、乗車中にスマートフォンで車内限定の「推し」のオリジナルボイスを聞くことができる。
新幹線をイメージした衣装を身に着けたキャラクターの等身大パネルなども用意し、京都駅や周辺観光地での誘客につなげる。JR東海営業本部需要創出グループの河野陽介さんは、「移動して新しい経験をする旅を楽しむきっかけをつくりたい」と語る。
また、企業の社員旅行や、プロレスといったイベントでの利用目的に、新幹線車両ごと貸し出すサービスを始めた。ビジネス客向けの座席空間の改良にも取り組むなどして、足元の運輸収入はコロナ禍前を上回る水準となってきた。丹羽俊介社長は、「多様化する移動需要に対応したサービスや商品の提供に取り組む」と強調。新たな輸送手段となる「リニア中央新幹線」の工事を進める中、安定した収益確保は不可欠だ。今後も幅広い層の利用を喚起しながら、東海道新幹線の価値を高めていく構えだ。
[時事通信社]
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