日系企業、社員の一時帰国容認も=邦人に募る不安―中国・男児襲撃事件
【北京時事】中国広東省深センで日本人の男児が襲撃された事件で、刺された男児が19日に亡くなった。中国では6月に江蘇省蘇州で同様の襲撃事件が起きたばかりで、在中邦人に与えた衝撃は大きい。同国から社員らの一時帰国に踏み込む企業も出始めた。
「安全と安心はビジネスを進める大前提だ。相次いで日本人が標的になったという事実を無視することはできない」。北京に拠点を置く大手メーカー幹部は語気を強め、社員の帯同家族の一時帰国を検討していると明らかにした。
パナソニックグループは家族に加え、その社員自身についても会社が経費を負担し、一時帰国を認めることを決めた。社員らをケアするため相談窓口を設ける方針。北京の日系企業からは「子育て中の社員を対象に、個別で不安事項の聞き取りを行う」(自動車大手)、「中国への出張を当分見合わせる」(部品メーカー)との声も上がった。
また、ある北京の駐在員は「日本人同士のイベントを控えるよう社内で指示が出た」と明かす。
中国に進出する日系企業や団体で構成する「中国日本商会」の本間哲朗会長は同日夕、北京市内で開かれた在中国日本大使館幹部らとの臨時会合に出席。「会員企業はそれぞれ今回の事案に対してのアクションを始めている。会員企業の間で情報を共有していく」と語ったほか、日中両政府に対し「事件の背景を含めた詳細情報の速やかな説明をお願いしたい」と要望した。
先の大手メーカー幹部は、蘇州の事件で捕まった容疑者の動機が判明していないと指摘。「安全対策を講じるためにも真相究明が不可欠だ」と訴えた。その上で「今の状況で対中投資の拡大は決断できない」と断言する。日系企業の投資意欲は低下傾向にあるが、さらなる冷え込みにつながるとの見方も出ている。
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