みらい、初めて氷縁へ=無数の海氷に北極を実感
【みらい船上・時事】北極観測中の海洋地球研究船「みらい」は16日、今回の航海で初めて海氷のある海域で観測を行った。水平線まで無数の氷が浮かび、波に揺られてゆったりと上下動を繰り返す。幻想的な光景に北極海へ来た実感が湧いた。
16日朝(日本時間17日未明)、3ノット(時速約5.6キロ)にまで速度を落としたみらいの舷側を大きさ1メートルほどの氷が一つ、二つと通り過ぎていった。その後15分ほどで氷の数はどんどん増え、遠方に白い平原が出現。「あれが氷縁だ」。みらいに乗る海氷域航海の専門家「アイスナビゲーター」のデューク・スナイダー氏が指さした。
遠目には一つの塊のようだが、実際には氷の分布密度が高い海域だという。氷縁が光を反射し、上方の雲が白く輝く「アイスブリンク」と呼ばれる現象も見られた。
みらいは北緯76度、西経167度の地点で、ドローンによる観測と船尾からセンサーを垂らすえい航観測を実施した。気温はマイナス2.6度。甲板の手すりに付いた水滴は凍り付き、船外に10分もいると頬がひりひりと痛い。
それでも、北極で急激に進む温暖化の影響は顕著だ。スナイダー氏は「10年前はこの海域には何年も解けずに残った分厚い『多年氷』が多くあったが、今は昨年できたばかりの『一年氷』しかない」と説明。多年氷は密度が高いため深い青色をしており、見分けやすいという。
みらいで首席研究者を務める海洋研究開発機構(JAMSTEC)の伊東素代・副主任研究員も「1990年代は砕氷船でなければここまで北上するのが難しかった」と同意。夏には海氷がまったくない海域が拡大しているといい、「確実に温暖化の影響が出ている」と話している。
[時事通信社]
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