魚も鏡で自分の体長確認=「自己意識」解明手掛かりに―大阪公立大
小柄な魚のホンソメワケベラは鏡に映る姿や写真を見て自分だと認識できるが、大阪公立大の研究チームは、縄張り争いの際に自分より大きな相手と戦わないよう、自分の体長を確認する目的で鏡を利用する能力があることを実験で明らかにした。論文は11日、英科学誌サイエンティフィック・リポーツに掲載された。
ホンソメワケベラは千葉県より南の岩場やサンゴ礁に生息し、他の魚に付いた寄生虫などを食べる体長10センチ程度の魚。激しい縄張り争いをするが、戦う前に相手と並んで泳いで互いの体長を比較し、大きな相手には攻撃を控える習性がある。
大阪公立大大学院博士後期課程3年の小林大雅さんと十川俊平特任研究員らは、この習性を利用。まず、鏡を見たことのないホンソメワケベラに、自分より大きな個体、同程度の個体、小柄な個体の3枚の写真を示すと、どの写真にも同じ頻度で攻撃を行った。
次に、水槽に鏡を入れ、映った姿を自分だと認識させた後に写真を見せると、自分より大きな個体と、同程度の個体の写真への攻撃頻度が減った。写真の個体が大きいほど、鏡との前を行き来し、自分の体長を確認する頻度が増えていた。
鏡に映った姿を自己と認識する能力は、自分がどのような存在であるかを知っている「自己意識」と関連するとされ、ヒト以外ではチンパンジーやイルカ、カラスなど一部の動物で確認。魚類ではホンソメワケベラが初めて報告されている。
小林さんは「体長を確認する目的で、意図して鏡を利用しており、ホンソメワケベラが高度な自己意識を持つ可能性を示した」と指摘。「よりヒトに近いレベルの自己意識が、脊椎動物の祖先の段階から進化してきた可能性がある」と話した。
[時事通信社]
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