膨張予算、試される財政規律=「金利ある世界」次期首相に難題
2025年度一般会計予算の概算要求は過去最大の117兆円超に膨らんだ。岸田文雄首相が秋に策定を目指した経済対策を次の政権が引き継げば、補正予算の編成も見込まれる。「金利ある世界」の復活で国債(借金)頼みの財政運営からの脱却が迫られる中、次期首相には就任直後から経済成長と財政規律の両立という難題が突き付けられる。
政府は新型コロナウイルス対策で膨張した予算の「平時回帰」を掲げてきたが、政権浮揚を狙った大盤振る舞いが常態化している。24年度当初予算こそ12年ぶりに前年度を下回る減額編成となったものの、これはロシアからの侵攻を受けるウクライナ関連の予備費を減らしたためで、実質的には110兆円台での増加基調が続く。
歳出抑制を阻む一因とされるのが、政権肝煎りの成長戦略を優遇する「重要政策推進枠(特別枠)」や、予算の見積もりを示さなくてよい「事項要求」だ。25年度の概算要求では、防衛力強化や少子化対策、脱炭素化促進、半導体支援強化などが並んだが、いずれも歳出拡大が先行し、財源の道筋は不透明さが残る。
国と地方の借金残高は1200兆円を超え、国内総生産(GDP)比で200%以上と先進国で最悪の水準にある。内閣府は25年度に国と地方の基礎的財政収支(プライマリーバランス=PB)が初めて黒字転換すると見込むが、大型の補正予算を編成すれば、達成は難しくなる。
南海トラフ地震や首都直下型地震などの大規模災害や、台湾有事といった地政学リスクに備えるためにも財政余力の確保は急務だ。野村総合研究所の木内登英エグゼクティブ・エコノミストは、次期政権下でも野放図な財政運営が続きかねないとして「本気の財政健全化策をしっかりと進めてほしい」と警鐘を鳴らした。
[時事通信社]
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