カスハラ電話にAIで対抗=オペレーター離職防止へ
コールセンターに寄せられる理不尽な苦情の電話からオペレーターを守るため、人工知能(AI)を使った「カスタマーハラスメント(カスハラ)」対策ツールの開発が進み始めた。電話越しの客はエスカレートしがちで、オペレーターの離職率が高い一因だと指摘される。膨大な音声データを駆使して激高した客の声色を変えたり、クレーマーの怒りを静める練習台になったりすることで、離職防止につながるのではと期待されている。
ソフトバンクは東京大と共同で、客の怒鳴り声を「怖くない声」に変換する技術を開発した。数万件に上る音声データを学習させたAIが、声量や抑揚などで「怖い声」を識別し、威圧感を適度に抑えた声色に加工する。開発当初は怒りがオペレーターに伝わらない技術を目指したが、客の感情を知ることは苦情処理に欠かせない。強いストレスを感じさせない程度に口調を和らげることにした。
ソフトバンクは来年度中のサービス提供を目指す。暴言や長時間の拘束といった迷惑行為に警告メッセージも流せる仕組みで、開発担当者は「『心の盾』として活用してほしい」と話す。
ソフト開発会社インタラクティブソリューションズ(東京)が提供しているアプリは、「AIクレーマー」をなだめる練習ができる。「異物混入」など苦情の内容や客の性格を設定でき、うまく対応すると怒りが収まる。やりとりの結果を「提案力」などの項目ごとに5点満点で評価し、改善点も指摘する。コールセンターを運営する企業からの問い合わせが相次いでいるという。
富士通も、カスハラ客役のAIを相手に対処法を訓練するツールを開発中。犯罪心理学者が分析した攻撃的なクレーマーに共通する話し方のパターンをAIに学習させ、リアルな会話を再現。来年度の製品化を目指す。
コールセンターは近年、電話からチャットに切り替える動きが広がっているが、高齢者を中心に電話でやりとりしたいというニーズは根強い。「クレーム対応が大変だとのイメージが採用のハードルになっている」(コールセンター業界関係者)との声もあり、顧客を刺激せずにオペレーターを守れるAI技術は業界に欠かせない存在になるかもしれない。
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