総裁選、自民保守派が「分裂」=安倍氏死去で指導者不在
自民党総裁選(9月12日告示、同27日投開票)を巡り、党内保守派が分裂模様にある。派閥裏金事件で逆風に直面する中、憲法改正や安全保障といったテーマより、衆院選の「顔」選びに関心が集中。盟主だった安倍晋三元首相の死去で強い指導者を欠いたことも背景にある。
前回の2021年総裁選には保守系の高市早苗経済安全保障担当相(63)が立候補。安倍氏が「後ろ盾」となり、自らの息がかかった議員らに電話で支持を取り付けるなど強力に支援した。1回目の投票では国会議員票で岸田文雄首相に次ぐ2位となり党内を驚かせた。
しかし今回は様相が一変。再挑戦する高市氏は推薦人確保に苦戦し、立候補表明は9月9日にずれ込むことになった。前回、高市氏の推薦人となった小林鷹之前経済安保担当相(49)は安倍派の中堅・若手らの支持を得て真っ先に出馬を表明。小林氏は改憲に「人一倍思いが強い」と述べるなど保守的な政治信条をアピールし、支持層が競合する。安倍氏と近い関係だった加藤勝信元官房長官(68)や青山繁晴参院議員(72)も出馬に意欲を示している。
「アベノミクスの継承」などが争点となった前回と比べ、今回は裏金事件への対応や「脱派閥」への姿勢に注目が集まる。「世論が反発しているのは裏金問題。憲法や外交・安全保障での保守の主張は主要な争点になり得ない」。自民中堅はこう述べ、「国家観」を軸に保守が結集できない状況を指摘する。
保守系の牙城だった最大派閥・安倍派は裏金事件を受けて解散を決め、「5人衆」と呼ばれた有力議員が失脚したことも影響している。
28日には東京・赤坂の衆院議員宿舎で福田達夫元総務会長を中心とする当選4回以下の議員約20人が会合を開いた。出席者は「多くは小林氏支持」と説明したが、派内には高市氏や小泉進次郎元環境相(43)らを推す動きもある。「裏金議員」が多数存在する同派にとって、次期衆院選の生き残りを懸けて「刷新感」演出に血眼になっているのが実態だ。
保守系ベテランは「今回の総裁選は党内保守系が割れるきっかけになるかもしれない」と話した。
[時事通信社]
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