イラン、ガザ停戦成否を注視=対イスラエル報復回避へ正念場
【イスタンブール時事】イランは15日に始まったパレスチナ自治区ガザの停戦を巡る交渉の成否を注視している。イスラム組織ハマス最高指導者ハニヤ氏の暗殺を受け、イランは関与が濃厚なイスラエルに報復を宣言。だが、「最後のチャンス」(イスラエル当局者)とされる交渉の結果次第では報復を自制する可能性も伝えられる。緊迫度を増す中東情勢を左右する正念場を迎えている。
カタール外務省によれば、ムハンマド首相兼外相は15日にイランのバゲリ外相代行と電話で会談。バゲリ氏は会談後にSNSで、交渉の進展状況を協議し「ガザの虐殺を止めるため、外交を含む実効性を伴う対策の継続が必要だと強調した」と明らかにした。
イラン最高指導者ハメネイ師は暗殺直後に「報復は義務」と明言したが、その後は具体的な言及が途絶えた。14日にテヘランで開かれた会合でも米国やイスラエルを批判したが、暗殺や報復への発言は伝えられていない。
イランは、イスラエル軍に最高幹部を殺害されたレバノンのイスラム教シーア派組織ヒズボラなどと連携し、今月初旬にもイスラエルへ報復攻撃するとの臆測が流れた。米欧やアラブ諸国は自制を求める外交努力を活発化。米軍は弾道ミサイル迎撃能力を持つ駆逐艦などを中東に追加派遣し、軍事的圧力も強めた。
4月にイランが初めてイスラエルを直接攻撃した際は、発端となった在シリア大使館空爆から報復まで2週間弱を要した。既にハニヤ氏殺害から2週間超が過ぎ、イランの出方は不透明なままだ。イランの反撃はイスラエルとの報復の連鎖を招くのは必至。軍事力に差があるイスラエルや後ろ盾の米国との全面衝突は避けたいイランが、報復の規模やその影響を含め、計画の見直しを迫られたとの見方が根強い。
ただ、イランやヒズボラは表向きは強硬姿勢を貫く。ヒズボラのナンバー2、カセム師は15日に系列メディアで「報復は不可避」と警告。カービー米大統領補佐官(広報担当)も15日、「イランが翻意を決めたとは言い切れない」と述べ、数日以内の攻撃を警戒していると強調した。
シンクタンク「国際危機グループ」のイラン専門家アリ・バエズ氏は取材に「イラン指導部にとって本土も代理勢力の要人も守れないとなれば、虚勢を見透かされて自らの安全保障が脅かされる」と指摘した上で、「イラン政府内で自制の要請に耳を傾ける人は少ないだろう」と分析した。
[時事通信社]
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