タイのセター首相が失職=憲法裁判決、閣僚人事巡り―16日、下院で後任選出投票
【バンコク時事】タイ憲法裁判所は14日、過去に有罪判決を受けた人物を閣僚に任命した人事を巡り、セター首相を失職とする判決を言い渡した。憲法が規定する閣僚の倫理基準に違反すると判断した。後任は16日、下院(定数500)議員による投票で選出される。新首相は現在の連立政権を構成するタイ貢献党やタイの誇り党、親軍政党などから選ばれる見通し。
判決を受けてセター氏は記者会見を開き、「約1年間誠実に働いてきたが、憲法裁判決を尊重する」と述べた。失職の判断は、裁判官9人中5人が賛成した。
首相の失職により政治的な混乱は避けられず、経済にも悪影響が及ぶ恐れがある。憲法裁は軍など保守派の影響が強いとされ、判決の背景にはセター氏が所属する貢献党の実質的なオーナーであるタクシン元首相と保守派の対立があるとみられる。
セター氏は4月の内閣改造で、タクシン氏の元弁護人ピチット氏を首相府相に任命した。しかし、当時の上院議員40人は5月、ピチット氏が2008年にタクシン氏の汚職疑惑に絡み裁判所職員に賄賂を渡そうとしたとして法廷侮辱罪で有罪判決を受けたことを問題視。憲法裁にセター氏らの失職を求めて提訴した。これを受け、ピチット氏は首相府相を辞任した。
タイでは過去にもタクシン派の首相らが憲法裁判決で失職し、「司法クーデター」と批判された。今月7日には昨年の総選挙で軍の改革などを掲げて第1党となった前進党が解党処分となり、司法の中立性が疑問視されている。
[時事通信社]
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