ロシア西部、情勢緊迫=ウクライナ軍、東京面積の半分占領―越境攻撃から1週間
ウクライナ軍がロシアの侵攻に対抗し、同国西部クルスク州に越境攻撃を始めて13日で1週間が過ぎた。ウクライナ軍のシルスキー総司令官は、東京都の面積の半分に当たる「約1000平方キロ」を占領したと発表。ロシアのプーチン大統領の衝撃は大きく、住民退避や領土奪還にあらゆる手段を講じるとみられ、情勢は緊迫の度合いを増している。
◇交渉へ態度硬化か
「国境から距離12キロ、幅40キロの範囲を侵入された」。クルスク州のスミルノフ知事代行は12日、プーチン氏が軍・治安機関幹部を集めた会議にオンラインで出席。28集落を奪われ、住民12人が死亡したと明らかにした。
州内の対象者約18万人のうち、約12万人が既に避難したとも説明。ロシア国内の大規模な住民退避は、1999年からの第2次チェチェン紛争以来の事態と伝えられる。
プーチン氏は会議で、6日に始まった越境攻撃の狙いは「将来の交渉で立場を有利にすることだ」と指摘。住民の生命や、クルスク州内の原発の安全などを脅かすウクライナと「一体どんな交渉ができるのか」と非難した。
ロシアは侵攻を続ける中、和平交渉の用意があると主張してきたが、態度を硬化させる可能性もある。プーチン氏はこれまで越境攻撃を「大規模な挑発」「テロ・破壊活動」と表現。国民の目に「敗北」と映るのを警戒しているかのようだ。
米政府系メディアは12日、クルスク州内の天然ガス施設が破壊された衛星画像を公開。ウクライナの激戦地に精鋭部隊を送る一方、本土防衛は新兵らに頼るロシア軍の弱点が浮かび上がった。
◇第2次大戦後初
「目的はロシアの情勢不安定化」「参加兵力は数千人」。ウクライナ高官は1週間の節目を前にAFP通信の取材に語った。ゼレンスキー大統領も12日、軍・治安機関幹部と会議を開き、越境攻撃を行っていることを公式に認めた。
内外で「第2次大戦後にロシア領が占拠されたのは初めて」と強調されるが、このタイミングでの越境攻撃について、米紙ワシントン・ポストは在キーウ(キエフ)外交筋の話として、11月の米大統領選前に「ロシアに反撃できることを世界に示す」ことが狙いと伝えた。苦戦が続けば、ウクライナに妥協を求める声が一層高まるからだ。
ゼレンスキー氏は12日のビデオ演説で越境攻撃に言及。2000年にロシアの原子力潜水艦「クルスク」が爆発事故で沈没し、1期目就任直後のプーチン氏が批判されたのと同様、クルスク州情勢も政治的打撃を与えるという認識を示した。
[時事通信社]
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