民間の戦没者慰霊碑、維持困難に=高齢化、補修費も課題―遺族「伝承のため残したい」
戦没者追悼のため遺族らが建てた民間慰霊碑の維持が困難になっている。管理してきた遺族の高齢化が進む一方、老朽化に伴う補修費用も高額なためだ。遺族は「戦争を後世に語り継ぐため、何とかして残したい」と話している。
厚生労働省が2019年に行った調査では、全国にある民間建立の慰霊碑1万6235基のうち780基が一部損壊するなどしていた。国は倒壊の恐れがある慰霊碑の管理に対する補助制度を16年度に設けたが、対象が自治体管理の碑などに限られており、支給実績は8年間でわずか26基にとどまる。
神奈川県伊勢原市の伊勢原地区にある「忠魂碑」は老朽化が進み、「忠」の字の中央に横一線のひびが入る。戦争で叔父を亡くした地元の遺族会の越水澄夫支部長(83)は「会員のほとんどが80代。いつまで管理できるか」と嘆く。市福祉総務課の小形宜仁さん(56)は「戦争を語り継ぐ上で慰霊碑は重要。遺族の方々に寄り添い、要望を聞いていきたい」と語る。
名古屋市守山区にある慰霊碑も劣化が深刻だ。高さ約20メートルある碑は建立から65年が経過。コンクリートは剥がれ、文字の一部が欠けているが、補修しようにも、見積もりだけで数万円かかるという。
管理する守山区戦没者遺族連合会の菱田功会長(84)は「建てた人や亡くなった人の思いを考えると撤去はしたくない」と強調。「戦争を知らない世代に語り継ぐためにも、どうにかして残したい」と力を込める。
こうした中、民間に代わって管理に乗り出す自治体もある。鳥取県倉吉市は21年、市内各地で別々に管理されてきた慰霊碑を市有地に集める事業を始めた。管理していた遺族団体から「高齢化が進み、掃除などができなくなった」との声が出たためだ。
これまでに6基を移設し、今年度はもう1基を移す予定。計7基の移設費は総額2000万円超の見込みで、うち350万円を国の補助金で賄う。同市福祉課の黒田昌典さん(45)は「後世に残すために、市も協力する必要がある」と話している。
[時事通信社]
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