信念貫いて悲願の金=樋口、減量苦を克服―レスリング〔五輪〕
悲願の金メダル獲得。レスリング男子フリースタイル57キロ級の樋口黎選手(28)=ミキハウス=は言った。「日本のフリーが世界一だと証明できた」。誇らしげな顔だった。
スペンサーリチャード・リー選手(米国)との決勝。パワーで押されながらも、相手の動きが鈍ったとみるや、すかさず前に出た。切れのある動きで寝技から得点を奪い逆転。4―2で退けた。
銀メダルに輝いた2016年リオデジャネイロ五輪後、逆境に立たされた。18年のルール変更で、試合前日の計量が当日朝に実施されることに。もともと減量に苦労していたのに、これで試合までにリカバリーする時間が短くなり、さらに苦しくなった。
21年の東京五輪アジア予選で、わずか50グラム超過で計量失格。「知識もなく、ただ飲まず食わずで動いて体重を落としていた」。その後、コンディションが戻らないまま臨んだ国内選考で敗れ、出場権を逃した。
だが、年齢を重ね、体重が落ちにくくなっても最軽量級にこだわり続けた。師事する湯元健一コーチには「命に関わるぞ。57キロ級はやらなくていい」と説得されても、最後まで首を縦に振らなかった。
3年前の反省を生かし、減量法を独学。動画サイトでボディービルダーの食事や体の絞り方を学び、大学の研究や論文も読みあさって「本を書ける」までに知識を深めた。「じわじわと体重を落として、計量した後にしっかり動ける体づくりを心掛けた」
突き詰めた結果、今大会は計画通りに減量を進めることができた。ウエートトレーニングで60キロ前後まで絞り、サウナに入るなどして水分だけで3キロを落として初日の計量をクリア。準決勝後はランニングなどで1.5キロほど減らし、決勝当日の朝にはリミットにもっていった。
壮絶な減量との闘いを乗り越え、悲願をかなえた樋口選手はこう言う。「人はいろんな挫折や絶望を味わう。そこからいかに次の目標に向かって立ち直るかで、成長できるかが決まる」。信念を持つ男の言葉には説得力がある。 (時事)
[時事通信社]
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