日銀、早期利上げ封印=市場混乱、サプライズから一転
金融市場の混乱を受け、日銀が追加利上げを急がない慎重姿勢に転じた。先月末の金融政策決定会合で利上げを決めたことが市場にサプライズを生み、急激な円高と株価暴落を招いたからだ。地ならしのないまま利上げに踏み切った日銀の政策運営に不信感が広がっている。
内田真一副総裁は7日、北海道函館市での講演で、先行きの金融政策について「当面、現在の水準で金融緩和をしっかりと続けていく必要がある」と説明。金融市場の動揺が収まるまでは、利上げを封印する姿勢を示した。
前回の決定会合前に植田和男総裁をはじめ、日銀幹部から利上げを示唆する情報は発信されなかった。9月会合以降の利上げを想定していた市場は、7月の利上げ決定を十分に織り込んでいなかった。
さらに、植田氏が会合後の記者会見で「経済・物価の見通しが実現していくとすれば、引き続き政策金利を引き上げていく」と表明。利上げに積極的な「タカ派」への豹変(ひょうへん)ぶりに、市場では「早ければ10月会合で0.5%への追加利上げがあり得る」との観測も浮上した。日銀の低金利政策を支えにしていた「円安・株高」は一気に逆回転した。
これに対し、内田氏は利上げに慎重な「ハト派」に転向。「金融市場に混乱が生じたことで、年内利上げのハードルは上がった」(大手証券)とみられている。野村総合研究所の木内登英エグゼクティブ・エコノミストは「日銀の説明はあまりにも振れが大きい。信認を損ねるものだ」と苦言を呈した。
乱高下する株、為替相場の動向には、与野党も懸念を強めている。自民、立憲民主両党は6日、衆院財務金融委員会の閉会中審査を月内に開くことで合意。立民の安住淳国対委員長は「特に植田総裁からしっかり聴取したい」と、追及する構えを見せている。
[時事通信社]
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