岸田首相、核なき世界「矛盾せず」=米の拡大抑止強化に
岸田文雄首相は6日、広島市の平和記念式典で「核兵器のない世界」実現に向けた決意を改めて訴えた。この後の記者会見では、米国による「核の傘」提供を含む拡大抑止の強化は、核廃絶の目標と「矛盾しない」との認識を示した。整合性が問われる首相の説明には、苦慮がにじむ。
「『核兵器のない世界』に逆行するとの指摘だが、私はそうは考えていない」。首相は会見でこう強調。「戦後最も複雑で厳しい安全保障環境にある」として拡大抑止の必要性を指摘した。
首相は4月のバイデン米大統領との会談で「核の傘」を含む戦力で同盟国を守る拡大抑止の強化で一致。日米両政府は7月28日に拡大抑止に関する初の閣僚会合を東京で開いた。日米が連携を強める背景には、中国による核戦力増強や北朝鮮の核・ミサイル開発がある。
被爆地広島を選挙区とする首相は「核なき世界」を目指し、2022年8月に核軍縮・不拡散に向けた行動計画「ヒロシマ・アクション・プラン」を提唱。23年5月の先進7カ国首脳会議(G7広島サミット)では、核戦力の透明化を促す「広島ビジョン」を発表した。
ただ、ウクライナ侵攻を続けるロシアは戦術核兵器の演習を行うなど、たびたび「核による威嚇」をちらつかせる。ロ朝接近や中東情勢の緊迫化など、核軍縮を巡る国際環境は厳しさを増している。
首相は会見で、核兵器用核分裂性物質生産禁止条約(FMCT)の交渉開始に向け、9月の国連総会に合わせてハイレベル会合を開く意向も表明し、「具体的な取り組みを進める」と語った。一方、来年3月に開催される核兵器禁止条約の第3回締約国会議のオブザーバー参加には重ねて否定的な姿勢を示した。自身の理想の追求と、厳しい安保環境とのはざまで相反する対応を迫られている。
[時事通信社]
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