思い込めたFK弾=北川、最高の舞台で初ゴール―サッカー女子〔五輪〕
サッカー日本女子(なでしこジャパン)は前半、幸先良く2点を先行しながら、自陣での不用意なパスミスからナイジェリアに1点を返された。そして迎えたロスタイム。この日戦列に復帰した北川ひかる選手(27)=INAC神戸=が輝きを放った。
中央右寄り、ゴールから約25メートルのFK。狙い澄まし、左足を振る。「まさかあんないいコースにいくとは」。横っ跳びのGKから逃げるような軌道で、ゴールネットに吸い込まれて3―1。日本は後半、そのまま相手を押し切った。
金沢市出身。フランスへ出発前、地元で行われた強化試合で膝を痛めた。現地に入ってからも別メニュー調整が続き、「焦りは正直あった」。慎重を期しつつ、復帰の目安よりも早くピッチに戻ってきた。
元日、能登半島地震が起きた時は実家に帰省していた。被害の大きな地域を訪ね、現状を見た。「家も結構崩れていて、悲惨だった」。親元を離れてJFAアカデミー福島に進んだ中学時代には、2011年の東日本大震災を経験している。母美千代さん(60)が北川の無事を知ったのは発生の約5時間後だった。「生きた心地がしなかった」と振り返る。
世代別代表に選ばれたが、なでしこジャパンにはなかなか定着しなかった。「小さい頃から努力する子。才能ではなく、努力でここまできた」と美千代さんは話す。大舞台で決めた価値あるゴールが、A代表初ゴールになった。
1日で能登半島地震が起きて7カ月。「石川出身として、五輪を戦っている姿を見てもらいたい。何か勇気、パワーを届けられたらいいなと、常々思っている」。思いを乗せたFKのシュートだった。 (時事)
[時事通信社]
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