妥協せず、夢捨てず=角田、重圧乗り越えた金―柔道〔五輪〕
勝利を告げるブザーを聞いた角田夏実選手(31)=SBC湘南美容クリニック=は表情を変えないまま、畳を下りた。「終わったのかな、という安堵(あんど)感の方が強かった」。二人三脚で歩んできた所属先の今井優子コーチの涙を見た時、「頑張ってよかったな」と自らの涙腺も緩み始めた。
両膝に抱える故障を感じさせない勝ちっぷり。準々決勝では地元フランスの大声援を受けたブクリを代名詞のともえ投げで鮮やかに下した。準決勝こそ苦戦したが、決勝もともえ投げで技ありを奪う危なげない展開だった。
無名に近かった東京学芸大から社会人で一気に花開き、所属先の山田利彦総監督は「あんなシンデレラストーリーは見たことがない」と振り返る。だが、当時は52キロ級。東京五輪を目指す上では阿部詩と志々目愛らが立ちはだかった。
2019年、悩む角田に今井コーチは告げた。「五輪を目指すなら48キロ級。柔道を長く続けたいのなら52キロ級のままでいいと思うよ」。夢を捨てられず、決心がついた。
妥協のない日々が始まった。「私はセンスの人じゃない」と自覚し、対戦相手を徹底的に研究。力の強い男子選手と練習を重ねる一方、筋肉が増えれば増えるほど減量は過酷さを増した。
21年から世界選手権を3連覇し、夢だった五輪代表をつかんでも「去年からずっとこの日のことを考えて、日々を過ごしてきた」。日本勢第1号の金メダルという周囲の期待には「プレッシャーに弱いタイプなので、耳をふさいでいた」。重圧と闘い続けた。
日本柔道で最年長となる31歳での優勝。48キロ級制覇は04年アテネ大会の谷亮子さん以来となる。表彰台の真ん中に立ち、「諦めないでよかったな」。すべてが報われた角田には、解放感にあふれた笑顔がよく似合った。 (時事)
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