パリ五輪、戦時の意義考える機会に=渡辺FIG会長インタビュー
【パリ時事】日本人で唯一、五輪競技の国際統括団体(IF)会長を務める国際体操連盟(FIG)の渡辺守成氏(65)が時事通信のインタビューに応じた。各地で続く戦争により国際社会が分断する中で迎えるパリ五輪の意義や、肥大化する大会のコスト削減案などを語った。
◇五輪後にロシア訪問へ
「世界中の体操選手は私の息子であり娘」が信条で、スポーツと政治は分けて考えるべきだというスタンス。FIGは現在、ウクライナに侵攻するロシアとベラルーシ選手の大会出場を認めている。渡辺氏は昨年キーウ(キエフ)を訪れ、ウクライナの政府高官と面会してロシア選手らの出場に理解を求めた。
ロシアはドーピング問題によりロシア・オリンピック委員会(ROC)として出場した2021年東京五輪の体操男子団体総合で、日本を破って金メダル。だが、パリは個人の中立選手での参加で、どの競技も団体は出られない。渡辺氏は「ライバルが来られない中、勝つことにどんな意義があるかを考える機会にもなる」と語った。
冷戦下の1980年モスクワ五輪と84年ロサンゼルス五輪は東西諸国によるボイコットの応酬となり、五輪史に暗い影を落とした。「あのような事例を繰り返さないためにも、パリ五輪後は『成功した』だけで終わらず、(スポーツ界として)次にどうするかを考えるべきだ」と主張。大会後、渡辺氏はスポーツと平和を考えるFIGの作業部会と共にロシアを訪れ、選手の声を直接聞くという。
◇コスト10分の1に
会計検査院によると、コロナ禍で開催された東京五輪・パラリンピックの開催経費は1兆6989億円。五輪の膨大な経費は、開催地にかかわらず懸念材料になっている。流通大手のイオンで長くビジネスの経験がある渡辺氏は、競技大会のノウハウがない開催都市ではなくIFを中心に運営することで大幅に改善すると強調。「最初からIFが関われば、大会コストは恐らく10分の1ほどに下がるだろう」と話した。
国際オリンピック委員会(IOC)委員でもある渡辺氏は17年からFIG会長を務め、今年10月の会長選にも立候補。欧州体操連盟会長のガイボフ氏(アゼルバイジャン)との一騎打ちについては自信を示し、「30年以降は世界の経済バランスがアフリカ中心になる。パルクールなどお金がかからない種目を中心に発展させていくことも戦略の一つ」と、早くも3選後の青写真を描いた。
[時事通信社]
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