経営計画、進む長期シフト=短中期「一里塚」にすぎず
事業環境の不確実性を背景に、5年以内の数値目標を積み上げる従来型の中期経営計画(中計)から、10年前後先の「ありたい姿」を示す長期計画にシフトする会社が増えている。中計は数年単位の戦略や目標を明確にできる一方、大きな成長ビジョンを描きにくいという指摘もある。企業経営に詳しい名和高司京都先端科学大教授は、「長期計画を策定した上で、その『一里塚』として短中期の計画を示すべきだ」と話した。
レゾナック・ホールディングス(HD、旧昭和電工)が掲げるのは、30年に「世界トップクラスの機能性化学メーカー」になること。実現に向け、最低限達成すべき指標として25年に売上高1兆円超を設定した。
ただ、中計は数年先の経営の羅針盤として、経営者が投資家や従業員と事業戦略を共有する役割も持つ。明治安田生命保険は「3年間程度の計画を策定し、定期的にPDCAサイクルを回しながら進めることが重要だ」と意義を強調する。
こうした状況を踏まえ、中計を策定する企業の間では、長期ビジョンと組み合わせるケースも増えている。アサヒグループホールディングスは「おいしさと楽しさで変化するウェルビーイング(心身の健康や幸福)に応え、持続可能な社会の実現に貢献する」という長期戦略を設定。これを前提に中計については、毎年見直す運用方法を取る。
名和教授は、従来型の中計に見られる数値目標のみを重視する姿勢を問題視。「『3~5年後に達成できる目標』を掲げ、結果として小さくまとまってしまう」と述べ、「『10倍の成長』などと掲げる欧米や中国企業のように、多少ストレッチ(背伸び)することが大事だ」と指摘した。
[時事通信社]
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