かさ上げ後も消えぬ不安=ダム前提の治水対策―熊本豪雨
災害関連死を含め67人が死亡、2人が行方不明となった熊本豪雨は4日、発生から4年を迎えた。球磨川の氾濫で79戸が全壊、3人が亡くなった熊本県球磨村の神瀬地区では昨年2月、国などの緊急治水対策による宅地のかさ上げ工事が始まった。しかし、対策の前提となるダムの完成は10年以上先の予定で、住民からは「再び大雨が降ったら」と不安の声が漏れる。
同地区で生まれ育った多武義広さん(57)の自宅は今年4月に工事が完了。約1.6メートル盛り土した敷地の上で暮らしている。ただ、4年前の豪雨災害では約3メートル浸水。近くの保育園にあった遊具用プールをボート代わりにして救助された。「計算上は問題ないと説明されたが、本当に大丈夫か」と漏らす。
経営する商店と自宅の両方とも被災した男性(53)も「漬かった高さまでかさ上げしてほしかった」と打ち明ける。約3.5メートル浸水した自宅を解体し、妻(46)と高校2年の長男(16)は隣の人吉市に移った。だが、男性は「地元の皆さんに支えられてお店があった」と残って店を続けることを決意。約2.5メートルかさ上げして再建した店で生活する。
国土交通省によると、宅地のかさ上げ高は、地区を囲う輪中堤や上流に建設予定の流水型ダムなどを前提に算定した。このため、全ての工事が完成するまでは4年前と同規模の水害が起きると再び浸水する危険性が残る。
復興が長引き、「工事を待てない」と村外へ移住した人も少なくない。神瀬地区の区長を務める假屋元さん(80)は、「このままではふるさとが寂れてしまう。先行きが不安だ」と話す。
一方、災害前から地区内のまとめ役を担ってきた神照寺の住職岩崎哲秀さん(50)は、地域を離れた人がいつでも戻れるよう、村の集会所などで年数回、交流イベントを開いている。「地域を守るため、集いの場をつくり続けたい」。ふるさとの再生に向け、自らを奮い立たせている。
[時事通信社]
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