公費解体完了は4%=申請2万棟超、着手に時間―業者宿泊施設も不足・能登地震
能登半島地震に伴う被災家屋の公費解体について、撤去が完了した家屋は申請があった2万棟超のうち約4%にとどまることが1日までに、石川県への取材で分かった。対応に当たる自治体職員や専門コンサルタントの経験不足に加え、奥能登地域では業者の宿泊施設も乏しく、工事の発注や着手に時間を要しているという。
県によると、県内の住宅被害は1日現在で計8万4594棟に上る。公費解体は6月24日までに2万865棟の申請があったが、行政の判断で行う「緊急解体」や、住民が費用を一時的に負担する「自費解体」を含めても、着手済みは2601棟。うち完了棟数は911棟にとどまる。
自宅が半壊し、家族3人で仮設住宅に避難する輪島市の女性(78)は25日に公費解体を申請したが、担当者からは「着手には半年以上かかる」と説明を受けた。女性は「地震のショックもあって疲れているのに…」と肩を落とす。
市の担当者は、遅れの要因について「公費解体は毎年度行う事業ではないため、対応する職員やコンサルの経験が不足している。宿泊施設も乏しく、業者は遠方から通いながらの作業を強いられている」と明かす。発注前には所有者の立ち会いを交えた現地調査も必要だが、2次避難中で遠方にいるため、日程調整が難航するケースもある。市は応援職員を含めた約20人で対応。しかし、申請書類の審査や解体費用の算定で、発注や着手には一定の時間を要するという。
公費解体は、所有者の特定と意向確認が求められ、被災家屋の相続が未登記の場合には、手続きが煩雑化する。国は5月下旬、建物流失や焼失のケースなどでは自治体の判断で解体を可能とし、申請手続きの負担を軽減した。県も専門コンサルを約200人増員し、2025年10月までの完了を目指す。
輪島市の担当者は「申請者には半年の見通しを示しているが、実際はもっと短くなると思っている」と強調。珠洲市は「これまでは業者の作業時間も限られていたが、プレハブなど宿泊施設も整備されてきた。夏以降は着手棟数が伸びていくと思う」との見通しを示している。
[時事通信社]
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