2024-06-21 15:10社会

皇室、英王室お手本に=敵対時期挟み、交流150年

英国側の歓迎に対する答礼晩さん会で、エリザベス女王と話される上皇さま=1998年5月、ロンドンのビクトリア・アンド・アルバート博物館

 天皇、皇后両陛下は22~29日の日程で英国を国賓として公式訪問される。日本の皇室にとって、英王室は長年「お手本」となる存在。第2次大戦中の両国が敵対した時期を挟み、約150年にわたって交流を重ねてきた。
 皇室と英王室の交流は1869年、当時のビクトリア女王の次男アルフレッド王子が遠洋航海の途中に訪日し、明治天皇と面会したのが始まり。英王室に詳しい関東学院大の君塚直隆教授(56)によると、王子は来訪に応じた日本側に良い印象を抱いた。これが皇室と英王室の交流が深まるきっかけとなり、日本側は海外要人をもてなす大切さを認識。宮中晩さん会などの国際儀礼を取り入れた。
 1921年には皇太子時代の昭和天皇が訪英し、ジョージ5世から歓待を受けた。同5世は英国に立憲君主制を定着させた国王として知られ、昭和天皇は後の79年、同5世から英国の立憲政治の在り方について聞いたと明かし、「立憲君主であることが私の終生の考えの根本」と記者団に述べている。上皇さまは皇太子時代、同5世の伝記を教育係だった小泉信三・元慶応義塾長と一緒に読み、「帝王学」を学んだ。
 両国は第2次大戦で敵対したが、サンフランシスコ平和条約発効翌年の53年、エリザベス女王の戴冠式に皇太子時代の上皇さまが参列。その後皇室と英王室の行き来が活発化し、71年に昭和天皇と香淳皇后が訪英し、75年には女王が訪日した。
 98年の上皇ご夫妻の訪英では、上皇さまが女王夫妻主催の晩さん会で「戦争により人々の受けた傷を思う時、深い心の痛みを覚えます」と述べている。
 天皇陛下は83~85年に英オックスフォード大に留学。著書「テムズとともに」で、女王をはじめ王室メンバーと親しく交流した体験を記した。2001年の単独訪英時には「次回は(皇后さまと)2人で一緒に来ることができたら」と述べていた。
 君塚氏は、皇室と英王室の交流は「ソフトな外交」と定義した上で、「それによって日英の関係が継続し、戦後の和解も進んだ」と指摘する。
 その上で、英国が欧州連合(EU)離脱を背景に日本との協力を強めたい考えだとし、戦後生まれの両陛下の訪英について、「新たな日英関係に向けた未来志向の訪問となるのではないか」と期待する。 
[時事通信社]

ロンドン郊外にあるウインザー城の図書館で、エリザベス女王(左)から日本ゆかりの品々について説明を受けられる天皇陛下。右は女王の夫、フィリップ殿下=2001年5月
皇太子時代に訪英し、当時の国王ジョージ5世と馬車に乗る昭和天皇=1921年5月、ロンドン
バッキンガム宮殿での晩さん会を前に、エリザベス女王夫妻らと写真撮影される上皇ご夫妻。左から2人目は女王の母のエリザベス皇太后=1998年5月、英ロンドン
君塚直隆 関東学院大教授(本人提供)
英国留学中、オックスフォード大マートンカレッジの寮の自室で過ごされる天皇陛下=1985年9月

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