2024-05-30 16:43政治

定額減税、6月スタート=準備急ピッチ、企業・自治体に負担

給与所得者の定額減税のイメージ

 政府が経済対策として行う1人当たり4万円の定額減税が6月に始まる。岸田文雄首相は「物価上昇を上回る所得増をより確実なものにする」とアピールするが、消費などへの経済効果は不透明。減税の実務を担う企業や自治体の準備は最終段階を迎えているが、担当者らは負担のしわ寄せに不満を募らせている。
 今回の減税は1人当たり所得税3万円と住民税1万円。1年限りの措置で、年収2000万円以下の納税者と、その配偶者や扶養親族が対象だ。政府は、給与所得者の場合、所得税の減額を6月の給与や賞与から反映し、控除し切れない場合は7月以降も差し引く。住民税は6月分は徴収しない。給与明細には「0円」と記載する。7月以降に、年間に支払う住民税額から減税分を控除した金額を、11カ月間に分けて徴収する。納税額が少なく減税分を下回る場合、差額を1万円単位で切り上げて支給する。
 政府は「(賃上げによる)賃金上昇が現れる時期に合わせて減税することで、デフレマインドを払拭し経済の新たな局面への動きを支える」(鈴木俊一財務相)と、賃上げと減税の相乗効果による経済の好循環実現に期待を寄せる。 
 一方、減税と給付を組み合わせた今回の仕組みは複雑で、源泉徴収事務を担う企業や住民税を扱う自治体では、繁忙を極めている。会計ソフト大手「フリー」(東京)の試算によると、100人規模の企業が給与への反映などの作業に要する時間は計40時間超に上る。国税庁も特設サイトや説明会で制度の周知に努めているが、専門用語が多く難しすぎるという声も多い。東京都内の中小企業の労務管理担当者は、兼業の人も多く「別の勤務先と二重で減税しないか心配だ」と漏らす。
 昨年末の減税決定を受け、今年1月に直ちにシステム改修に着手した政令市の担当者は「通常は実施まで1年程度猶予があるが、今回は制度が複雑な上に準備期間が短い」と苦言を呈する。都内のある区役所は他部署に応援を要請。3月以降の土曜日や5月の大型連休を返上し、住民税の減税額を記した企業宛ての通知書などを準備した。担当者は「苦労して準備を進めたが、0円と書かれた明細を見た国民は、どれだけのありがたみを感じるのか」と苦笑した。

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