甘いリスク管理、再び露呈=外債依存、見直し急務―農林中金
農林中央金庫が外国債券運用で巨額損失を計上する見通しとなり、大規模な増資検討に追い込まれた。運用の失敗で財務基盤が揺らぐ事態は、リーマン・ショック後の巨額増資と同じ構図で、国内有数の機関投資家の甘いリスク管理が再び露呈した格好。大部分を外債運用に頼る収益構造の見直しが急務だ。
「想定を超えるような金利の引き上げだった」。奥和登理事長は22日の記者会見で、米国の金利上昇に対応し切れなかったことを認めた。
農林中金は、融資先が農林水産関係に限定され、貸出金は総資産の2割に満たない。一方、運用資産は約56兆円に上り、そのうち55%超が米国債を中心とした債券投資で、株式は2%程度にとどまる。
リーマン・ショックの際は、ハイリスク・ハイリターンのサブプライムローン関連の運用で多額の損失を計上した。このため、比較的安全性が高い国債運用に比重を置いてきたが、長引く低金利下で、外債での収益確保に活路を求めた。海外での貸出金利上昇や株高による増収で損失をカバーできた大手銀とは異なる収益構造が、裏目に出た形だ。
奥氏は「教訓は金利リスクとそれ以外のリスクバランスだ」と指摘。今後、海外でのプロジェクトファイナンスや資産運用ビジネスで収益多角化も進める考えを示した。
ただ、国内の農業人口が減少する中、「農林中金からもたらされる利益が収益の大きな源泉になっている」(業界関係者)という農協も少なくない。農林中金の失敗は、農業や地域経済のさらなる打撃につながる可能性もある。
[時事通信社]
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