内部通報保護制度、理解4割どまり=識者「さらなる法整備を」―消費者庁1万人アンケート
消費者庁が実施した全国の就労者1万人に対するアンケート調査で、内部通報した人を守る「公益通報者保護制度」を理解していると答えた割合が4割未満だったことが分かった。制度が法制化されてから約18年がたったが、有識者は「違反した事業者に罰則がないなど制度には不備がある。さらなる法整備が必要だ」と指摘する。
アンケートは昨年11月、従業員3人以上の事業所に勤める15~79歳の男女を対象にインターネット上で実施され、今月開催された公益通報者保護制度検討会で結果が報告された。アンケートが実施されたのは2016年以来。
制度の理解度に対する問いでは、「よく知っている」と答えたのは11.9%、「ある程度知っている」が26.7%だった。最も多かったのは「知らない」(36.5%)で、「名前は聞いたことがある」(24.9%)と合わせると約6割が制度を十分に理解していなかった。
事業所の規模別に見ると、従業員数が多いほど理解度は高まる傾向にあったが、法律で対応が義務付けられている300人超の事業所の従業員でも「知らない」「名前は聞いたことがある」とする回答が計51.5%と過半数を占めた。
勤め先の内部通報窓口に関する問いでは、「設置されているか分からない」とする回答が49・2%と最多で、「設置されていないことを知っている」とする回答も20.6%に上った。重大な法令違反を目撃しても通報しない理由(複数回答可)としては、「誰に通報したらいいか分からない」が最も多かった。
実際に相談や通報をした476人のうち、「相談・通報して良かったと思う」とする回答は69・5%に上る一方で、「後悔している」も17・2%いた。後悔の理由(複数回答)としては「調査や是正がなかった」が57.2%と最多で、「不利益な扱いを受けた」とした人も4割を超えた。
公益通報者保護制度検討会の委員で、早稲田大法学部の水町勇一郎教授(労働法)は「会社からの嫌がらせが実態としてある。不安があれば通報できない」と指摘。現在の法制度では事業者が通報者を守っているかどうか確認する仕組みも行政側にないとし、「事業者による対応体制の届け出や、通報者に不利益な扱いをした場合の罰則など、制度の実効性を高める法整備の検討が必要だ。実効性が高まれば制度への理解も広がる」と話した。
[時事通信社]
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