新法運用、透明性が課題=経済安保情報、保全へ評価制度
政府が日本の経済安全保障に関わる重要情報を指定し、その情報を取り扱える人物を身辺調査で制限する適性評価制度の創設を盛り込んだ新法が10日、参院本会議で成立した。重要情報の保全対象が経済安全保障分野に広がる。政府は重要情報の指定範囲などを運用基準で明確にしていく方針だが、恣意(しい)的な運用への懸念も強い。
新法の名称は「重要経済安保情報の保護および活用に関する法律」(重要経済安保情報保護・活用法)。来年5月までに施行される。
適性評価は「セキュリティー・クリアランス」と呼ばれ、政府が情報を漏らす恐れがないと認めた人物に情報の取り扱いを制限する仕組み。信頼性を確認するため、政府は評価対象者の同意を得た上で、家族の国籍、本人の犯罪歴、精神疾患の有無、飲酒の節度、経済的な状態といった事項を調べる。情報漏えいには5年以下の拘禁刑などの罰則を科す。
政府は2014年施行の特定秘密保護法で、防衛、外交、スパイ防止、テロ防止を対象に適性評価制度を既に導入している。評価対象者の大半は公務員だったが、新法成立で今後は民間の対象者が増える。政府は数千人程度と試算。岸田文雄首相は「民間が保有する情報を一方的に秘密指定したり、規制を課したりするものではない」との考えを示している。
高市早苗経済安保担当相は「政府間の経済安保情報のやりとりがスムーズになり、ビジネスチャンス拡大にもつながる」と強調。新法成立で経済安保情報の保全レベルが先進国並みとなり、同盟国との情報共有がこれまでより容易となる。日本企業も、国際的な共同開発や海外政府による入札へ参加しやすくなるという。
しかし、国会審議では懸念が噴出。企業関係者が適性評価で不利益を被る可能性や、政府による恣意的な制度運用を警戒する声が上がった。日本弁護士連合会も「適性評価の調査の行き過ぎを抑止する仕組みが想定されていない」との声明を公表。プライバシー保護などで課題は残っており、政府は運用基準で懸念を払拭する必要がある。
[時事通信社]
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